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少女漫画と小説の感想ブログです

16歳の青春を謳歌しようとすると ストーカー夫が邪魔しにくる件について。

キスよりも早く 2 (花とゆめコミックス)
田中 メカ(たなか めか)
キスよりも早く(きすよりもはやく)
第02巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

女子高生・梶文乃は生活のため担任の尾白先生と結婚!! 利用するだけのつもりだったのに、次第に先生に惹かれていく文乃…☆ 順調に愛を育む二人だったが、クラスメートの黒沢に二人の関係を疑われて…!?

簡潔完結感想文

  • イベント満載。夏関連の行事を詰め込んで お届け。肌の露出多めです。
  • 大いなるマンネリ。話は早くもワンパターンかな。キスよりもエロい。
  • 比較対象。若い男に興味がないことを示して自動的に先生の価値を上がる。

のミスは夫の活躍の踏み台でしかない 2巻。

『2巻』から本格的に、季節と学校イベントを盛り込んでいく 長期連載シフトが始まる。

先生と生徒という関係でありながら結婚して夫婦であることが最大の特徴の漫画。

現在、妻である主人公の文乃(ふみの)は高校2年生なので、
ここから季節を1巡して、高校3年生の夏からは進路問題などを採り入れれば
物語のネタには困らないと思われる。

本書は 葉鳥ビスコさん『桜蘭高校ホスト部』みたいに時間がループする
サザエさん時空」ではなく、1回きりの かけがえのない青春である。
先生と過ごした日々や、好きという気持ちは地層となって重なっていく。

ただ、イベントを投入しても話の骨組みは似通ってしまう。

どうしても良くも悪くも先生が格好良いだけの漫画ですね。

先生であり夫でありスーパーマンである一馬(かずま)が
妻である文乃のもとに駆け寄る場面を描きたい漫画。

今回は駆け寄る理由が妻のピンチだけでなく、
夫の大人げない独占欲が含まれているのが見所か。

一馬は教師として妻の役割に囚われず、
高校時代の青春を謳歌して欲しいと願う。

文乃は自分に自由を与えてくれる先生に感謝しつつも、
本当は誰よりも先生と一緒にいたいと願う。

相手を想うからこそ思うままに行動してほしいが、
その気持ちは同時に不安を生んでしまう。

立場や歳の差、様々な違いを発見し、そして歩み寄る初々しい夫婦の姿を描く。


しい展開として恋のライバルが投入されます。

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最初からレベル99の先生に勝てる人は誰もいない。無敵すぎて退屈を感じるぐらいだ…。

それが文乃のクラスメイトでバレー部所属の黒沢(くろさわ)くん。
段々と文乃に惹かれていく黒沢くん。
しかし相手は人妻。
それが本書の面白いところですね。
時すでに遅し。
もし、黒沢くんが文乃の心を奪って、
高校卒業後に結婚してもバツイチとの結婚になるのか。

表面的には高校時代の同級生同士の結婚ですが、
こういうのって親御さん などからの心証は悪くなるんでしょうか。

長身で童顔(本書の主要な男性は ほぼ童顔であるが…)で純情、
なかなかの当て馬スペックではあるが、
黒沢の輝きは花火のように一瞬で消えてしまう。
ほぼ『2巻』のみの限定当て馬です。

押しが弱そうなこともあるが、
なにせ先生に設定が いっぱい乗っかり過ぎているから相手にならない。

地味眼鏡の元ヤンキーなんてズルい。
そこに夫という永久保証まで付いているから、月とスッポン。


そういえばクラスメイトは文乃の家庭の事情をどこまで理解しているのでしょうか。
両親を亡くしていることなどは既知なのだろうか。
弟の鉄兵を迎えに行くことは周知の事実みたいだが。

1年の時は生活環境が安定せず、本人も荒(すさ)んでいた。
先生に拾われて精神的に安定したことで、
クラス替えがない学校だが2年生からクラスメイトと交流を深めていく転校生気分だろう。

文乃の学校生活が充実していくことは、
私も先生同様 嬉しく思う。


生の我慢が利かなくなるのも『2巻』から。

邪魔者が闖入するというお決まりのオチがなければ、
先生は文乃に手を出して、「キス我慢選手権」も早々に終わっていただろう。

そして我慢が利かないのは心理面も同じ。

文乃に学校生活や青春を楽しめ、と言っている割に、
男子生徒と2人きりになると強奪してしまう。

2人きりになるまで文乃を じとーーーっと監視しているのが怖い(笑)

文乃が先生のことを大好きだからいいものの、
本当に弟・鉄兵(てっぺい)との生活のため金銭目的の結婚だった場合、
夫の束縛と監視は耐え難い苦痛だろう。

更に別の男(黒沢など)が好きだった場合、
彼との恋は悲恋に終わる運命にある。

黒沢サイドからの少女漫画も見てみたいですね。
交流を始めたクラスメイトが実は人妻で、
彼女の結婚相手は とんでもない金満家のオヤジ。
彼女のために成長していくという内容。

人間味もあって成長もあって楽しめそうだ。


う、先生に足りないものは そこである。
先生は完璧すぎるのだ。

最初から最強キャラだし、地味 ⇔ ヤンキーの二面性、
そして今回は女性にベタ惚れという属性まで付いてきた。

でも人間味が感じられない。
いかにも漫画内の生物という感じを受ける。

先生を好きになれたら楽なのに、と読書中に思った。
そんな私は、一緒に暮らしても 先生を好きにならなかった場合の文乃です。

良い人なんだけど好きにはなれなくて辛い。
なので、上述の文乃の解放と束縛も、先生の二枚舌め!と思ってしまう。


あとは『1巻』の感想でも書きましたが、
文乃を弟の鉄兵ごと貰い受けた割に、自己完結の生活じゃないところが気になって仕方ない。

先生の友人で隣人である龍(りゅう)に頼り切った生活が目に余る。

鉄兵の通う保育園の保育士である龍が、鉄兵を保育園に連れていくのはいいとして、
休日出勤や学校イベントの際も彼に鉄兵を預けるのは どうなのだろうか。

龍は鉄兵の移動マシンと化してます。
文乃の行く先々に鉄兵を連れていくのが龍の役割。
彼にプライベートなんてありません。

先生も文乃も龍を便利に使い過ぎている。
先生も結婚して彼らを扶養しているなら、自費の範囲でどうにかしろ と言いたくなる。
妻の方にも自分の方にも頼れる親族がいないことは最初から分かっていたはずなのに。

龍が登場する度に憐憫を覚えてしまう。
漫画として鉄兵の登場が必要なのは分かるのだが…。


して文乃の間違いも目に余りますね。

文乃が先生に従順すぎて、残念な感じに仕上がっている。
先生が球技大会の優勝を狙いたいと一言いえば、全身全霊で狙いに行く。

苦手のバレーを猛特訓する前に、同じ時間を料理の特訓に使って
先生の家事の負担を減少させるのが
妻として出来る最大の恩返しなのでは? と思ってしまう。

そして猛練習の無理が たたって高熱を出した文乃。
先生だけが彼女の異変に気付くという胸キュン場面。

でも、「昨日 薄着で寝たでしょ?」と注意する先生に、
布団をちゃんと掛けるなどケアしなかったのは先生のミスでは?とツッコミたい。

そして「消毒」と言いつつ雑菌を注入する先生も どうかと思う。

…きっと私は、少女漫画を読むのに向いてないんですよね。


中盤の指輪を失くす話も文乃の空回りが目立つ。
彼から貰ったアクセサリーの喪失は少女漫画のお約束ですね。

この回は文乃の これまでの心境にも踏み込んでいるので、
最終回のネタでも良かった気がするなぁ。

人生の総ざらいと再出発の話なので、これ以上の最終回を作れるか逆に心配になる。

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いやぁ、いい最終回だった。まさかここから10巻続くとは誰も思わなかっただろう。

そして鉄兵から目を離した龍が鉄拳制裁されるのは、何か違う。
確かに彼の監督ミスではあるが、
指輪の捜索を文乃が独力でしようとしなければ良かったのだ。

文乃には甘くて、龍に責任を押し付けるのは、
龍の優しさ、鉄兵への配慮に対して あんまりな仕打ちだと思う。

そもそも龍のミスがなければ、先生だってイケメン化できないんだぞ!と言いたい。
人のミスをフォローするところに先生の価値は出来上がるのだ。

キスよりも早く 2 (花とゆめCOMICS)

キスよりも早く 2 (花とゆめCOMICS)

  • 作者:田中 メカ
  • 発売日: 2007/12/05
  • メディア: コミック