《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

私には 来年の春に旅立つ貴方の姿も、距離に負けない自分の姿も視(み)えるから…。

兄友 9 (花とゆめコミックス)
赤瓦 もとむ(あかがわら もどむ)
兄友(あにとも)
第09巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

花火大会に出かけたまいと西野さん。そこで、西野さんに“重大な告白”をされーーー!? 雑誌上で超大反響のあった「パソコン回」や雪紘×秋ちゃんはもちろん、西野父も再登場で大混乱!? そして、ラストでは衝撃を受けること間違いなし…!な壁ごし&つつ抜けLOVE、第9巻!!

簡潔完結感想文

  • 対話。2人きりの空間で腰を据えて将来のことを話す。そして先んじて行動する良妻賢母。
  • 決意。心のバリアフリーを果たした2人には「薄い壁」の秘密など問題ではないのだが…。
  • 親族。父親たちを交えた4者面談+姻族。父親同士の加害者と被害者の関係は雪紘と秋に継がれる。

だ一つの秘密以外は次々とバレていく ラス前の 9巻。

相変わらず連載の流れ、それに伴う心の流れが綺麗で感心してしまう。
連載1回分が個として独立しながら連続している。

今回で言えば『8巻』から続く、西野(にしの)が まい に話さなければいけない問題は、
次の話の、2人が先を見据えた ある物を一緒に買いに行く話へと繋がる。

そして その商品を開封するために、初めて西野が まい の部屋に入って…、という流れが素晴らしい。

1日で起きることを2話に分けでも どちらの話もちゃんと面白いことが凄い。
そして大きな問題が解決した後に、まい が自信を持って
西野に対面しようという意識の変革をしっかり描いているところが本当に上手い。

登場人物たちの個性が強く、ギャグマンガとしても秀逸なので、
どうしても お笑い方面を望み、そして評価しがちだが、
本書は人の心の動きも しっかりと捉えて、タイミングを逸さない。


そして この『9巻』では以前 伏線として張られていた、
西野の父親を巡る誤解も遂に解かれる。
…と、同時に新たな問題を発生させている構成がまた素晴らしい。

まい と西野のこれからを阻むような問題はもうないと思われる。
いよいよクライマックスである。


そういえば『8巻』から連続で まい たち七瀬(ななせ)兄妹と西野の3人での表紙、
内容を知らない人から見たら、2人の男性に言い寄られる女性主人公の図としか見えませんね。
さあ、最終『10巻』で まい は、どちらを選ぶのか⁉

…ってか、この3人の並びはあっても、本当の三角関係である まい・西野・加賀の3人は1回もなかったですね。
加賀の優先度の低さに泣けてくる。ストーカー化するなよ…。


西野が なかなか まい に切り出せなかった話は進学予定の大学の場所についてだった。

だから西野も、そして「薄い壁」越しに一足早く その事実を知っていた まい も、
こんなに距離の近い「今年の夏」を目一杯 楽しもうとしていた。

「伝えるのが…ちょっと怖かったんだ」という西野。
それは自分の言葉で まい を傷つけてしまうかもしれない恐怖、
話を聞いた まい に目の前で泣かれてたら決心が鈍るかもしれない恐れなどを含んだものだろう。

まい にとっては既知のことであったこともあり、
淡々と報告を受け入れてくれた まい の態度は西野にとっても救いだったのではないか。

そして、来年の春からは2人が今ほどは近くに いられないことを知った まい が、
先んじてバイトを始めて、パソコンを購入して動画による会話をしようとしている点が胸に迫る。

距離が出来ることを知っても、当たり前のように対話方法を模索する まい。
不安で取り乱したり、不安から逃げるために別れたり という選択肢は まい にはない。

これまでに比べれば何百倍も離れる2人の距離。
だが まい は自分で考え、その距離を、2人を隔てる壁を、
パソコンの液晶の厚み分だけにする方策を練っていた。

まい の行動力・精神力、本当に尊敬します。
扱い方によっては修羅場になる問題で、女性主人公がピーピーと泣く場面にもなる。
けど、まい は一滴の涙も流さずに、行動と理念で愛の強さを証明して見せた。
さすが年上にみられることの多い、肝っ玉母さんである(ゴメンよ)


うしてパソコンを購入して自宅での設定を試みる際に、
家庭で黒光りする、ゲッチューしたくない虫的事情で、リビングや客間が使用不可となり、
西野は初めて まい の自室に足を踏み入れるのだった…。

そこで まい は自室と兄の部屋の「薄い壁」について一瞬、危惧するが、
自分たちの関係が、その秘密の露見によって揺らぐようなものではないという確信から、
むしろ秘密の露見を望むのだった。

この時の、兄・雪紘(ゆきひろ)と まい の暗黙の了解に近い意思の疎通が いいですね。

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与えられた任務は寡黙にこなす、それがエージェント・雪紘のモットー。

雪紘にとっては まい の心理など言葉が無くても筒抜けなのだろう。

2人のブラコン・シスコンという言葉は似合わないドライだけど信用している関係性が好きです。
そして雪紘はなんだかんだ言って ちゃんと優しいのです。

ただ、まい の部屋に初めて入ったことを雪紘に報告している西野には少し幻滅。
らしいちゃ らしいのですが、雪紘としては、あまり知りたくもない情報だろう。
(その後、自室に入る雪紘が全てを了解している伏線とはいえ)

このままじゃ来年の今頃も「七瀬さんが初めて俺の部屋に泊まりに来る。どうしよ~」
などと雪紘に相談しかねない。
そんなことを送信した日には雪紘は西野の通信を全てブロックするでしょうね。

そして、デリカシーが無いと言えば まい たち七瀬家の父親。
殺虫剤を探しに息子の部屋に無断で入り、
ベッドの下の収納を勝手に漁るなんて、親として、父親として問題だろう。

雪紘の所持DVD「ドジっ子ワンちゃん特集」も中身は本当にそうなのだろうか。
ラベルだけ貼り換えているのかもしれない…(苦笑)


して『9巻』のラストは誤解が生じていた西野父と まい の再対面。

これで お互いの両親への交際の挨拶が正式に終わりました。
もう結婚しかありませんね。

そんな2人のリア充な様子を見て カーテンの中からやさぐれる
西野の妹・秋(あき)のツッコミが面白かった。

予想外の展開に西野が本書で2度目の死んだ目をしているのも良い。

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全ての誤解が解ける時、新たなる修羅場が始まる。俺たち ロミオとジュリエット

この4者面談が破談に終わったら、もしかして2人の関係も終わっていたのか⁉

だが、こじれそうになる両家の父親同士、はたまた自分たちの関係を
西野が一喝して まい の不安を一掃したのは、彼の名場面ですね。


しかし七瀬父の同性愛方面へのジョークや誤解を招くような言動の多さは何なんでしょう。

それが笑いになると思っている古い人間のようにも思う。
職場などでは社会的に結構ダメな方向で、ずっと人をイジり続ける人なのかもしれない。

兄友 9 (花とゆめCOMICS)

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兄友 9 (花とゆめコミックス)

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