《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

結局、自分で決めたことは1つもありません。誰が好きかも誘導してもらいました。

スターダスト★ウインク 11 (りぼんマスコットコミックス)
春田 なな(はるた なな)
スターダスト★ウインク
第11巻評価:★☆(3点)
  総合評価:★★(4点)
 

日向です。杏菜とつきあってるのに、杏菜は実は颯のことが好きなんじゃないかって思ってる。杏菜も、麻生さんに「2人とも好きなんでしょ」って言われて悩みだして…。それで、杏菜と俺は別れることにしたんだ。 【同時収録】スターダスト★ウインク 番外編 べつに好きじゃないけど。

簡潔完結感想文

  • 付和雷同。誰かが言ったことを信じる純粋な私だから、私が誰を好きかも人に決めてもらうぞ☆
  • 2つのキス。ほぼ受け入れているキスと、寝込みを襲うキス。これもまた誰かのお膳立てだぞ☆
  • 番外編。幼なじみ あるある。好きでもないのに付き合ってみる。別れてみる。登校してみる。

なじみからも読者からも そっぽを向かれ、そして誰もいなくなった 最終11巻。

なんと最終『11巻』の半分は番外編。

時系列的には本編の最終回の後の話だから仕方がないが、
『11巻』に掲載することで、色々と誤解を生んだと思われる。

じっくり1巻分を使って恋の決着がつけられると踏んだ読者には、
前半戦で終わる本編は一層 淡白で物足りなく映ったのではないか。

私もその一人で、あれよあれよと流されるまま一応の決着を見せた本編にはガッカリした。
評判の悪い最終巻を一層、評判悪くしたのは本編がページの半分しかないことではないか。


そんな『11巻』の最初のページはヒーローの1人・颯(そう)の
主人公に対する「もう つきあってらんねーわ」という言葉から始まる。

ハイ、これ皆の心の声。

幼なじみ2人と付き合ってみて別れてみて、でも2人とも好き。
そんな結論に達した主人公・杏菜(あんな)を皆も見限ったよね?

最後の最後まで幼なじみ2人の男性に おんぶにだっこ。

一応は出した恋の答えも、一方の男性から言われた通りに自分を納得しただけ。

私は本書の一番の欠点はここだと思います。

結局、主人公は自分では何も答えを出していない!

コロコロと変わった好きな人も、全て外圧によるものだった。

幼なじみが恋をしたから自分も適当な相手を見繕って、
幼なじみに告白されたら流れのまま交際して、
もう一方の幼なじみに近づく女性が現れたら、好きになって…(以下略)
それの繰り返し。

そして折角 交際していた人と別れる時も、第三者の意見を鵜呑みにし、
更には最終的な答えまでも、自発的なモノではなかった。


作者に言いたい、
どちらを選ぶか分からない物語と、
どちらを選んでも問題のない物語は違う。

杏菜の「好き」に何の説得力も持たせられなかった物語など、
一応のハッピーエンドを繕っても価値がない。

なまじ「りぼん」読者が大好きな絵が描けるから、
毎号毎号 次が気になる話を創作できてしまうから(ツンデレ)、
こんなにまで無駄に話が伸びてしまったのだろう。

でも完結後に創造物を振り返って見ると、そこにあるのは空虚だった。
初読と感想を書くために再読した私が、本書を読むことは二度とないだろう…。


ぜ、作者は杏菜にどちらかを選ばせずに、
杏菜には気づかれずに杏菜を誘導する手法を取ったのだろうか。

これが一番の謎であり、欠点です。

これだと杏菜が もう一人の幼なじみ・日向(ひなた)と別れる契機となった、
同級生・絢音(あやね)の時と全く同じ展開なんですよね。

人に こうだ と言われたら そう思ってしまう杏菜の思考能力のなさと付和雷同な性格。

これが最後まで変わらなかったことを意味してしまっている。


…となると、作者は本気で颯と日向による杏菜への「姫プレイ」が描きたかったのではないか、と疑ってしまう。

最後の最後まで好きな女性を自分以外の男性に橋渡しするという究極のお膳立て。
杏菜姫への最後の「姫プレイ」。

確かにこれによって颯の悲哀は際立っている。

バカ杏菜は全く気が付いていないようだが、
颯が虚勢を張った精一杯の強がり、
杏菜が自分を拒否をしたという筋書きを作るための即席理論、
杏菜の中にある自分への想いを説明づける明晰さ、
これらは全て颯の長所である。

最後の「姫プレイ」をした後、振り返らず立ち去る彼の顔は どんな表情だったのだろうか…。


方で、欠点が丸出しなのが杏菜。

上述の通り、最後の最後まで自分で答えを出していない。
誘導された意見に乗っかるだけ。

颯が素直にこれまでの心情を吐露するシーンでも、
杏菜がフラフラするから、颯が混乱しているのに、

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自分のことだけを考えて人を傷つけてきた人の言うことは違うぜ! 視野の広さが違うんだよ!

「颯は 周りのこと考えすぎだよ 正解じゃなくていいから
 もっと自分の幸せのこと考えればいいのに」

とか、上から目線で語りだす始末!

お前が言うか?
周りのこと考えなさすぎなのに?
自分の幸せのことすら考えられないのに?

もう杏菜の一挙手一投足に腹が立ちます。
本気で二度と会いたくない。
記憶から消したい。


また、全体的な欠点としては、
今回、颯はキスを一つの「踏み絵」にして杏菜の本心を探り出そうとしたが、
杏菜の抵抗が弱すぎて説得力に欠ける。

しかも杏菜は「まぁ 考えてもわからないなら 体に聞いてみるのも1つの手」と、
颯が自分にキスをするという行為を自体を否定しない。

当初の計画通り颯が寸止めしたから良かったものの、
颯が止めなければ、小さな抵抗はあったもののキスは出来てしまっただろう。

結局、その程度の心持ちなんですよ杏菜は。

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人に流されるままの杏菜。このまま流される結末も十分にあり得るから本書は色々と酷いのだ。

そして、キスで気持ちを計る、という颯の「踏み絵」自体、
『1巻』で颯とキスしていることが大きな瑕疵になっている。

これは多分『1巻』の時点では颯とキスできたが、
本当に好きなのは日向だと分かった今は出来ない、という対比構造だろう。

だが、弱い。説得力が激弱(げきよわ)である。
だって杏菜、強い拒否をしていないんだもの。
杏菜の気持ちに最後まで本当のことなどないんだもの…。


更にキス問題は文化祭での出し物・白雪姫のラストシーンに繋がり、
「ほんとうの恋」であった、日向とキスを交わしてハッピーエンドという流れなのだろう。

作中と作中劇がリンクする手法はよく考えられている。
その為に、日向と颯が入れ替わるというのも、颯らしい お節介である。

だが、いかんせん相手が杏菜だから…(以下、愚痴が続く)。


杏菜が望む3人の関係は、颯の我慢によって成立しているのでした。
めでたくない、めでたくない。

「姫プレイ」をされていることに気づかない姫の滑稽さ といったらない。
一生 気が付かないんだろうな。
知的レベル・精神年齢が違いすぎるから…。


ってか、全体を振り返って見ると颯の出番少なくない?

付き合ったのも一瞬だし、
恋のライバルが多発した日向に比べてエピソードが少ない。

絢音が暗躍するのも日向と杏菜の交際後だし、
杏菜が颯に気持ちが揺らぐ場面は無いに等しい。

これはずっと日向ルートだったのではないか。
颯ルートに舵を切る場面がどこにもない。

想いが深いだけに颯の無念は いかばかりか。
主人公カップルを応援できない漫画になりましたね。


「スターダスト★ウインク 番外編 べつに好きじゃないけど。」…
もう一組の幼なじみ、菜花(なのか)と陽多(ひなた)と絢音。
菜花は陽多のことが明らかに好きなのだが、本人には自覚がなくて…。

気持がブレないだけ菜花は杏菜よりも好ましいよ…。

ってか逆か、菜花が颯で、杏菜が陽多なのか。

そう考えると、陽多の優柔不断っぷりは杏菜に通じるものがある。

好きでもないけど好きと言われたから付き合ってみる。
自分のやったことに対して公開が大きくなったので一方的に別れてみる。
今まで通りにいたいから幼なじみポジションを謳歌する。

って、書き出してたら陽多まで嫌いになりそうだ…。


陽多は てっきり杏菜に横恋慕する役目だと思ってましたが、
結局、主だった活躍は漫画を描く姿の写真撮影回だけでしたね。

陽多には最後まで鈍感でいて欲しかった気がします。

菜花の自分への好意を気づいてまで器用に立ち回れるタイプじゃないんじゃないかな。
まぁ、それほど思い入れがある訳じゃないんで、どーでもいーですが(酷い)。