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少女漫画と小説の感想ブログです

作者「ちょっと もう読み返すのも しんどい」。読者「こっちのセリフだわ!」

スターダスト★ウインク 6 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
春田 なな(はるた なな)
スターダスト★ウインク
第06巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★(4点)
 

杏菜の母です。杏菜が高校に入学して、そろそろ1か月。幼なじみの颯くんと最近は一緒に登校してないみたい。同じクラスのはずなのに、ケンカでもしたのかな。こうゆう時はいつも日向くんの出番だったけど今は離ればなれだし。むしろ離れてる日向くんの方が杏菜と仲良いみたい!?
【収録作品】スターダスト★ウインク スピンオフ特別編

簡潔完結感想文

  • 漫画家さんのお仕事見学。作中作によって杏菜の現状を整理する総集編の役割なのかな?
  • 真実が写る写真。杏菜の撮った颯は、杏菜にしか撮れない颯の姿。でも冷戦は継続中…。
  • 動物園デート編。東京 ⇔ 新潟間を男に2往復させる杏菜。「姫プレイ」は交通費を使わない。

「また言わせてくれないの?」とセルフツッコミが炸裂する 6巻。

たった一言を言えば終わるような漫画だが、それを ずっと言わない漫画でもある。

あとがき にて「漫画も作者も息切れしてる感じ」と正直に心情を吐露しており、
途中の裏話でも「ネームにどん詰まって どん詰まって」
「ちょっと もう読み返すのも しんどい」と書いている。

それもそうだろう。
引き延ばすにも限界がある。

特に今回は主人公・杏菜(あんな)が好きな男の子・日向(ひなた)から、
思わせぶりなセリフを言われて舞い上がって、緊張するという展開。

ハイ、超絶 鈍感な杏菜さん本人も流石に気づいていましたが、デジャヴ感のある展開ですね。
勝手に解釈して舞い上がるのは、以前も一度やった手法です。

流石にそれでは進歩がないと理性的な作者は思ったのか、
今回は杏菜から一歩踏み出します。

しかし、踏み出すのですが、結果的には『6巻』では言いません。

毎度、言わんのかい!、または、聞かんのかい!とツッコむだけで終わる漫画。

読者としても「ちょっともう 読み返すのも しんどい」。


半は、新ヒナタこと陽多(ひなた)の回。

なんと中学在学中から漫画家デビューしていた陽多。
そして現在は彼が高校生漫画家だと知った杏菜は、
軽い気持ちから入部した写真部が目指す、写真甲子園の題材に、
漫画を描く陽多の姿を撮りたいと熱望するが…。

私としては てっきり陽多が杏菜を好きになる契機となる出来事だと思ってましたが、
特にそんな展開は用意されておらず肩透かしを食らった感じがした。

こちらの勝手な思い込みなのですが、
そうなると陽多の役割は本当に写真の題材のみ、ということになるのかな?


そして、陽多。
やっと眉が太めに描かれるようになって、颯(そう)との差別化が図られましたね。
初登場時の瓜二つには驚いた。

でも本書の中でも、電話してるのが颯だと思ったら陽多だった!という場面もありました。
陽多は別にモテ設定じゃないんだから、
スタイル抜群の颯とは、もっと体型に差をつけて欲しいものだ。

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これは颯(そう)。シャッターに手を掛けるのは自分の心が動いた時だけ。颯は そんな被写体。

そして薄々気づいてましたが、
写真部の活動が本格的になるにつれ、
完全に杏菜の親友ポジションが交代しましたね。

一緒に同じ高校に進学した中学の頃の友人2人が、
物語に一切 登場しないのはどういうことなんでしょうか。

こんなことなら別高校に進学して、杏菜が友達作りに奮闘する方が良かったのでは…?

まぁ、元親友たちが杏菜に辛辣な意見を述べても、本人は聞く耳を持たない、
そんな杏菜の態度に彼女たちも徒労を感じていたのかもしれません。

杏菜が切ったのではなく、杏菜が見切られたのかも。
杏菜の友情の浅はかさが原因ですね。


情といえば、颯と日向は お互い出しゃばらない関係が好きです。

日向が東京に引っ越したら、颯が杏菜との距離を縮める。

それは日向を出し抜こうということではなく、
杏菜を悪い虫から守り、今は2人だけど特別な3人の関係を周囲に知らしめるためでもあっただろう。

まぁ、人の心を踏みにじる人でなしの杏菜に颯も愛想を尽かした結果になりましたが…。


そして颯が杏菜との冷戦を宣言したら、今度は日向が気遣う。

たとえ東京と新潟という距離があったとしても、人を想う気持ちを届ける手段はある。

彼ら2人の杏菜への気持ちの総量は一定で、
どちらかが多く出力すれば、どちらかは控える。

そんな 幼なじみ ならではの阿吽の呼吸が読者にも心地よく思う。

この恋の結末がどんなものになっても、
少しの時間を置いた後は、笑って祝福できる関係性を保ってくれるだろう。

まぁ、問題は杏菜に そんな幼なじみの阿吽の呼吸を全く感じないこと、
そして、彼らが大事にするほどの人間だとは思えないことなんですけどね…。

いやそれ、もう物語として致命的欠陥じゃん!


んな日向とは東京で動物園デート。

非情に高校生らしい健全なデート内容ではないでしょうか。

ちょっと気障なセリフも日向が言うと天然っぽくかんじるし、
親元を離れたからか、ちょっと大人で、セクシーになった気がする日向。

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禁止されているはずの恋愛系の質問にも冷静に答えるスキャンダル対応能力の高い日向。

2人が良い感じになったところで…。
また引き延ばすような展開が待ち受けていました。

全11巻の半分、6巻か5巻以内で終われば、そこそこ楽しい作品になったかもしれない。
でも全体量が増えれば増えるだけ、物語の濃度は低下する。
そうなると「ちょっともう 読み返すのも しんどい」ッス。


新潟と東京、遠距離の2人の1日デートを可能にしてくれたのが、
現在 東京在住の元 同じマンション住まいの大学生のお兄さん・真白(ましろ)。

東京まで片道3時間、往復6時間を1日で2往復する彼の動機は何?

せめて帰路は自費で帰りなさいよ、杏菜。
ここもまた「姫プレイ」。

そういう人の厚意に甘えすぎるところが、嫌われる理由だと思うよ。


「スターダスト★ウインク スピンオフ特別編 かりん編」…
日向たちが中学3年生だった、本編より少し前の頃の話。
望月(もちづき)くるみ の妹・中学2年生の かりん は、日向を好きになり、
彼が美術高受験のために使用している美術室が活動拠点の美術部入部するが…。

これは日向が中学3年生の秋ごろの話ですかね。
夏休みの喧嘩以降(『3巻』)、距離を置いた杏菜の位置に かりんが納まるかに見えたが、
逆に見えてきたのは自分では入り込めない絶対的な領域、という構造が良いですね。

短編を読んでいると、作者の本来の持ち味は こうなのだろうと類推する。
本当に略称『スタンク』だけが、例外的に出来が悪いんだろうな…。