《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

両手に花、という状態をキープしたいから人の感情を蹂躙(じゅうりん)することに決めました (^_-)-☆

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春田 なな(はるた なな)
スターダスト★ウインク
第01巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★(4点)
 

杏菜です。中3になったばかりの14歳だよ。同じマンションに住む颯と日向は、同い年の幼なじみ。これからもずっと3人なかよく…と思っていたら、颯が私に!!

簡潔完結感想文

  • 登場人物、読者、そして作者にも先の読めない手探り三角関係。伏線? そんなの 宇宙へポーイ!
  • 結論を先送りすることだけが主人公・杏菜の使命。『1巻』で2人の男性と交際して別れるのも使命。
  • 人の心に配慮することを知らない主人公。自分の本音や願いが届けばそれでいい。甘やかされ主人公。

11巻、自分の心を顧みないまま人の心を踏みにじりまくる作品の 1巻。

うーーん、久々にこんなに相性の悪い作品に出会いました。

いくら読者の想定年齢が低い「りぼん」作品であっても、
こんなに無感情・無感動のまま読んだ作品はあまりない。

考えてみると本書の3つの点が私に合わなかったと推察される。

まず、主人公をはじめとするキャラクタが合わない。
そして、広がらない作品世界が合わない。
最後に、行き当たりばったりの展開が全体構成を重視する私の主義と合わない。

以上の3点を踏まえて、『1巻』と全巻を通じた感想を書いていきたいと思います。


人公は古城 杏菜(こしろ あんな)。14歳の中学3年の女子中学生。

杏菜の自宅マンションの両隣は生まれてからずっと一緒に育ってきた
永瀬 颯(ながせ そう)と都倉日向(とくら ひなた)という2人の男の子が住んでいる。

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唯一の女性が一番 精神年齢が低い。どっちからも選ばれなければいいのに。ハハハ…。

「予想以上に整った成長を遂げた颯と日向は 常に話題の中心」となり、
中学3年になった今でもマンション前で待ち合わせて一緒に登校している杏菜は、
「2人が目立ってるおかげで 私が迷惑してる」。

2人といつも行動を共にしているせいで、先月の卒業式の際に先輩に第2ボタンを貰った際にも
「かっこいい幼なじみの彼氏が怒るんじゃない?」と言われる始末。

好きな先輩にも認知されるほど彼らと一緒にいることに対して、杏菜の言い分は
「2人と登校するのは小学校からの日課だし 今さら変えられない」だそうだ。

この杏菜の独り善がりの考え方に、さすがに作者も友達にツッコミ役を配置しており、
「(一緒に登校するってことは)先輩に誤解されたままでいいってこと」
「杏菜ちゃん 本当は先輩とかどーでもいいんじゃないかなー」と言わせている。

この場面だけでも杏菜の浅慮がよく表れている。
作者がそれを狙ったとしたら、とても良いエピソードの創出だ。

浮かび上がるのは好きな先輩に指摘されても自分の生活は変える意思はない杏菜。
彼氏は欲しいが、彼以外の男の子との登校を止めるつもりもない。
杏菜の理想の彼氏は、嫉妬しない、杏菜の言い分を全部 許容してくれる都合の良い男なのだ。

そう、杏菜は男心というものを一切無視して生きていく人なのだ。

そして、その逆は絶対に許さない人だと思う。
例えば、件(くだん)の先輩と交際して、
もし先輩に一緒に登校する女性がいたりしたら杏菜は猛然と怒るだろう。
自分という彼女がありながら、なぜそんな嫌がらせのようなことをするのか、と。
杏菜の中では自分がするのは自然なことも、自分がされたら嫌がらせに変換される。

杏菜という人は、他人の立場に立って物を考えられない人なのである。
それは最終巻まで変わらない彼女の最大の欠点。

まぁ、三角関係を描いた作品の犠牲者ともいえるのだけれど…。


この状況でも、杏菜が奥手で恋愛というものに一切興味がないとか、
マイペースで自分が他社からどう思われても気にしない性格なら良かったのだが、
杏菜は恋に恋しているし、女子からの視線も煩わしく思っている。

そして幼なじみが自分に好意を持っていると知りながらも、
キスを交わして、交際を承諾して、彼氏と彼女になってもなお、
何もかも今まで通りの方式にこだわる杏菜。

なんだ、ただのマイペースの自己中か、という結論が容易に出てしまう。

オンラインゲームで仲間たちから色々と施されて
お膳立てをしてもらうことを「姫プレイ」というらしいが、杏菜はまさにそれ。

しかも腹立たしいのは杏菜に自分が姫プレイで良い気分にさせてもらっている自覚がないこと。
男性たちに色々と気を遣ってもらっているのに、まるで自分は被害者だと言わんばかりの軽挙妄動。
姫、というより裸の王様ですね。哀れにすら思うよ…。

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杏菜のピンチに駆けつける騎士(ナイト)たち。杏菜の軽率な行動は責められません。姫だから。

菜の悪口はこの辺にして、2つ目の「広がらない作品世界」について。

これは3点目の「全体構成」の話にも繋がるのだが、
杏菜の心に決着が付いてしまった時点で、作品は終わってしまうので、
出来るだけ問題を先延ばしにして、小規模な事件ばかり起こしていることが、作品の欠点となってしまっている。

また杏菜の悪口になってしまうが、彼女は『1巻』で2人の男性と交際し、即、別れている。
浮ついた彼女の精神を表すエピソードだが、徹頭徹尾、言い争っては振り出しに戻る展開には さすがに辟易する。

そして杏菜以外の2人の男性陣の魅力が乏しいことも問題である。

女子生徒たちの注目の的、という以外のキャラクタの魅力がまるで伝わらない2人。

杏菜は2人に恋している訳ではないので、好きになるエピソードやポイントが作れないのだろうが、
それにしても外見面 以外での魅力が乏しい。
そして2人の外見も髪の色以外での違いがない。

最初から幼なじみです、他の人には入り込むことの出来ない領域です、と
読者にもエピソードや彼らの背景を省略してしまっている気がする。


また、タイトルにもなっている、ハートを盗む「ウインク」というのも最初だけ。
その話が出て以降、ウインクなんてしてないし、日向に至ってはウインク出来ないし…。

何もタイトルと関連するモチーフがないことも作品がまとまりに欠ける一因か。

颯のポケモンマニアというのも単なる作者の趣味だろう。
日向が得意の絵に関しては終盤は他のキャラに取って代わられているし…。


一番、扱いが雑だと思ったのは中学時代の杏菜の友人・妃(ひめ)と瑠衣(るい)。
いつの間にか似たようなキャラに立場を奪われフェイドアウトしていく様子には悲哀を感じた。

もうちょっとうまく活用してあげられなかったものだろうか。

物語の途中で地理的な距離が広がったりするが、作品の精神世界は狭小である。
杏菜の鈍感に振り回される男たちしか描かれない。


が最も残念なのは3つ目の、全体構成の問題。

幼なじみとの三角関係を描くにあたって編集者との話し合いの中で、

「やっぱりどっちが杏菜と結ばれるか読者に悟られたくないよねー」
「ってことで 杏菜は最終的にどっちとくっつくか決めないで描いていこうか」
「だって作者も分からなかったら読者にも絶対分からないでしょ」

という話が出たことで、連載中ずっと「スジナシ」でお送りされた本書。

この編集者のアドバイス、理解できる部分もある、
確かに三角関係で、明らかな格差や伏線があれば、読者は途中で離れて行ってしまうだろう。

だから鮮度を保ったまま連載をお届けしたかったのだろう。

そして多分 編集者は、これまで かなりのキャリアを積んだ作者なら、
それでも面白い内容になるという信頼をもって臨んだのだろう。


が、それによって出来たのが上記の狭小な作品世界だと思う。

結論を出さないために、物語の核心に踏み込まずに周回するだけの物語。

そうして暴走しながら周回する杏菜は止まってしまえば倒れてしまう自転車と一緒。
だけど、段々と止まらないことにイライラしてきてしまう。

杏菜はその時起こっている問題や個々人としか向き合わないのだ。
自分の気持ちも、三角関係全体も見渡さない。


私が全巻を読了してから感想を書いているのは
読了後に再読することによって、作者の仕掛けた伏線や、
全体を通した構成など、初回では見えなかったものが見えてくるものがあると考えてのことだ。

だが、本書にはそれがない。
体力の続く限り自転車を漕いでいるだけ。

読み返しても、気が付くのは、問題を先送りにするために遠回りをさせる努力ぐらいだ。
一つ一つのエピソードが まるで意味を持たないから、
熟読して感想を書く気が起きなくて困る。


それでも全11巻にまで物語が続いたのは、
ウインクではなく三角関係一つで読者を魅了し続けたからだろう(フォロー)。
それは間違いないのだが…。