《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

クリスマスにも真っ赤なお耳のイブシくん。スキルの発動条件は秘密です。

ハツカレ モノクロ版 5 (マーガレットコミックスDIGITAL)
桃森 ミヨシ(とうもり みよし)
ハツカレ
第5巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

チロの誕生日も知らずショックを受けるハシモトくん。でも、せめてお祝いしてあげたいとチロをぎゅっと抱きしめた。男の人の強い力にチロはドキドキ。さらにハシモトくんの家に誘われ…!?

簡潔完結感想文

  • 12月はチロの誕生日そしてクリスマス。何も起きない漫画にしてはイベントが満載。
  • 写真家イブシの新モデルはチロたち女子高生4人組。見直される特技と見抜かれる癖。
  • プレゼントは用意したけれど肝心の約束はしていない画竜点睛を欠くチロたち…。


幼稚園以降は女子校で育ったため男の子に縁遠いチロを主人公に据えて、彼女から見たオトコノコの不思議を描きながらも、オトコノコの生態をしっかり描いている物語の5巻。

主人公のチロが天然というか、どちらかというと泰然自若としているから、かえって炙り出されるのはオトコノコ側の嫉妬や焦り。
彼氏であっても、交際の進め方や距離感、他の男の出現に悩むし、
片想いであっても、どうしても素直になれない自分の態度、誰かを悲しませてまで気持ちを優先させない配慮と遠慮と、それを上回ってしまう抑えきれない気持ちに悩む。


以前も書いたかもしれませんが、本当に彼氏のハシモトがもう少し粗暴で嫌なやつだったら片想いのイブシは楽だったろうな、と思う。
でもハシモトはチロの嫌なことなんて絶対しない男で、ライバルでありながら気のいい友達で、そしてチロはそんなハシモトしか見ていない。

そしてハシモトの癖や気持ちは勘案してよりよい二人の関係を築いているチロが、もう少しイブシに興味を持ったら、その言葉と裏腹な彼の純情が露見するかもしれない。
そうならないのはチロがイブシをまだ少し怖がっていて、彼の態度の大体において怒りが混ざっていると考えるから。

チロが気持ちを暴いてくれればイブシの気持ちも少しは楽になるんですかね。
まぁ、もしチロにバレたとしたら、イブシはチロが泣くまで全力で否定しそうですが…。

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あの日の自分と重なるイブシの切実な想い
誕生日やクリスマス、自分だけの時間だと思っている時のハシモトは少しイブシに強気ですね。
そしてチロを困らせないように悩ませないようにイブシに気持ちを悟らせることさえ禁じる。

誕生日、当日ではないがハシモトの中でチロをお祝いする日にハシモトは彼女を家に招く。
この時の両者に、一線を超えようという気持ちは無かったんですかね。

真面目なハシモトは順序立てるだろうから、キスもしないうちから一足飛びに関係を発展させることはないだろうと読者としては思えるのだが、自室に呼ぶことは、そういう意味と捉えられても不思議ではない。
ハシモトも自分のテリトリーにチロが入ることが重要で会って、入って何をするというのは問題ではなさそうだが。
チロの方に、そういう考えに至る描写はないし、緊張や気合も感じられない。
ハシモトの部屋でチロが望んだことは彼の中学校の卒業アルバムを見ること。
出会うまでの時間をも埋めて、心身の距離を縮めていく二人。

ただやはり密室で男女が近くにいると怪しげな雰囲気は湧き上がるもので…。
いよいよ初キス! …未遂でした。
これは男性側のダメージが大きそうですね。
ハシモトもあわよくばキスは狙ってそうですもんね。


自分の誕生日に特別な意識はなかったチロですが、そんなチロも彼女として迎えるクリスマスは気になる様子。
自分に出来ることとしてプレゼントを選んだチロだったが、肝心の待ち合わせをしないままクリスマス当日を迎えてしまう。
しかもバイトを頼まれてハシモトと会うことも叶いそうにない。
そんな中でイブシは「クリスマスはっ 好いとるもんどーしで いっしょにおる きしょい日やろがっ」とバイトの交代とハシモトに会うことを応援するのだが…。

それでもバイトを優先したチロ。
だが町中で会ったイブシとハシモトが合流し、バイト後のお店でクリスマス会をするいつもの4人。
広い意味で「好きな人と一緒にいるための日」を満喫し、彼らは4人での2枚目の集合写真を撮る。
恋愛漫画でありながら、かけがえのない高校生活の日々を追体験できる漫画です。
数年後、十数年後もこの4人での写真を見るだけで「あの頃」が甦ってきそうです。
写真には情報以上の物が閉じ込められているのかもしれません。

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2回目の4人並んでの集合写真
話は前後しますがイブシは写真に関してはやっぱり格好いいですね。
甘味処「はやしや」のモデルに選ばれたチロたち友達4人組がグロスを塗っていることにも目ざとく気づくし、発言もイケメン化している。

得意分野があるイブシに輝いている姿を見せられて女性陣は大盛り上がり。
だが、もしかしたらその姿に一番影響を受けたのはハシモトかもしれません。
たとえ写真家イブシに比べるとアホみたいでも必死になるしかないと声を上げる。
やっぱり本書はオトコノコたちの頑張りや意地、その裏の嫉妬や焦りまでちゃんと書いてあるオトコノコ漫画なのかもしれない。

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自分に焦りを感じるハシモト
そういえば、今更ながらですが、チロたちの女子高はバイトが許可されてるんですかね…?