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虚空の逆マトリクス(INVERSE OF VOID MATRIX) (講談社文庫)

虚空の逆マトリクス(INVERSE OF VOID MATRIX) (講談社文庫)

資産家令嬢西之園萌絵にとって、その晩は特別な夜になるはずだった。ところが、小さなすれ違いから、誘拐事件の謎ときに…(「いつ入れ替わった?」)。海辺の街の停留所で毎日バスを待ちつづける女性の背後に潜む謎(「赤いドレスのメアリィ」)。輝きに満ちた森ミステリィの宝箱。全7編収録。


短編集第4弾。森短篇集の読み方に大分慣れてきたので力まず平静に読めました。今回はかなり物語の輪郭がハッキリした短篇が多かったのが印象的。いつもならば何編かは必ず抽象的な物語が入るのに。ただその分、全体的に小さくまとまっている印象も受ける。「トロイの木馬」は森さんのヴァーチャル・リアリティの考え方が全面に出ているが、それ以外の小説は誰かの短篇で見ても驚かないような作品だ。短篇の物語が抽象的だと文句を言い、具体的過ぎても文句を言う嫌な読者ですね、私は…。「いつ入れ替わった?」はある程度語られている萌絵よりも、犀川先生の微妙な感情の乱れを中心に置いて読むと面白さ倍増かも。果たして彼はどんな気持ちで一日を、または前準備をしたのだろうか(笑)

  • トロイの木馬」…オンラインの生活が当たり前になった世界で、「僕」はあるウィルスの感染源をたどる内に、ある情報を得る…。森博嗣が度々書いてきた未来像が集束した感じの一編。オンラインの世界でのオフラインの殺人などの考えは面白かったが、オチが分からず…森博嗣のこのパターンは私は苦手で嫌い。
  • 「赤いドレスのメアリィ」…海辺の街の停留所で毎日バスを待ちつづける女性の背後に潜む謎…。15ページほどの短篇。謎、というよりも行動理念を解明する話。実は読み始める前からバイアスをかけてしまう読者(が多いだろう)。
  • 「不良探偵」…ふとしたキッカケで小説家になったサトル。それを喜ぶ従兄弟のシンちゃん。だが彼らと親しい女性が殺される事件が起きる…。人の思考パターンを考えて犯人を導く短篇。彼にはもっと責任を感じて欲しい。物悲しい。
  • 「話好きのタクシードライバ」…題名通り、話の長いタクシードライバが語る話。彼の話の行き着く先は…?森さんらしくない凡庸な作品だと思った。もっとホラー調になるかと思ったけれど、呆気無い幕切れでそれも残念だった。
  • 「ゲームの国(リリおばさんの事件簿(1)」…ダイイング・メッセージが残された殺人事件の謎を回文作りの名人・リリおばさんが推理する…。誰もが謎よりも回文に圧倒されるだろう一編。ちなみに事件簿2は永久に無いとの事。
  • 「探偵の孤影」…謎に包まれた若い女性から依頼された姉の捜索。探偵は捜査の先に何を見るのか…?古き良き海外ハードボイルド小説みたいな感じ。ただラストは趣向が変わる…。怖くて切ない結末。でも同士討ちになるのでは?
  • 「いつ入れ替わった?」…あらすじ参照。誰もがメインディッシュに置いてあるだろう作品。本の配置ではデザートだけど。これまた衝撃的な展開。デザートだね、これは。ごちそうさま。トリックもあっさりと解明されながらも結構好き。彼と彼女はこの手に関しては似たもの同士の思考回路を持っているのであった。

虚空の逆マトリクスこくうのぎゃくマトリクス   読了日:2003年01月16日