今夜はパラシュート博物館へ THE LAST DIVE TO PARACHUTE MUSEUM (講談社文庫)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/03/16
- メディア: 文庫
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N大学医学部に通う大学生・小鳥遊練無は、構内で出会った西之園家の令嬢に誘われ、「ぶるぶる人形を追跡する会」に参加する。その会の趣旨とは、N大内の各所に出没する謎の紙人形を観察するということだという。ぶるぶる人形の謎を解こうとはりきる西之園嬢に対して、いま一つ気分が乗らない練無だったが…。(ぶるぶる人形にうってつけの夜)他七編の森のミステリィの煌きを集めた珠玉短編集。
書店で『小鳥遊練無は、構内で出会った西之園家の令嬢に誘われ…』の文章を見た瞬間に私は勝負に負けました。読者サービスに溢れた作品。「S&Mシリーズ」と「Vシリーズ」の短篇で半分以上を構成する作りは読者にとって嬉しい限り。だってメインは長編では味わえないシリーズの登場人物の会話でしょ? 今回は森博嗣の短篇が苦手な私にも、どれも楽しめた短編集でした。
- 「どちらかが魔女」…大御坊安朋と彼の元同級生の女性がそれぞれ語る不思議な話。この二つの話が導く意外な結末とは…!?ドキドキしました。登場人物と読者の先入観を2重に裏切る展開。ただミステリ的には、ややアンフェアかな。
- 「双頭の鷲の旗の下に」…ある中高一貫校の文化祭前夜に窓ガラスに穴が空けられていた。それを解くのは一体誰か…。意外にもTHE 理系小説。ここまで直球でくるのも珍しい。それよりも最後の展開に目がいってしまいますけどね(笑)
- 「ぶるぶる人形にうってつけの夜」…↑のあらすじ参照。この本のメインは二人が出会ってしまった事でしょ。ぶるぶる人形なんて味付けのコショウに過ぎません。しかし西之園家の令嬢とは持って回った言い方をするもんですね。フェアだけど。これって『まどろみ消去』の「誰もいなくなった」と同じ構造なんですね。
- 「ゲームの国」…名探偵の磯莉卑呂矛は助手のメテ・クレモナとともにある島へ向かう。その島で起こる事件を彼は解決できるのか?冒頭から怪しい雰囲気でしたが最後まで突っ走ってます。ここまでくると爽快の域に達しますね。
- 「私の崖はこの夏のアウトライン」…崖や海を畏怖し嫌悪しているはずなのに来てしまう男。彼はそこで何を見るのか…。読んだ事ないですけれどイメージ的には乙一さん?叙述トリックホラーとでも言いましょうか。ネタバレ承知。
- 「卒業文集」…小学校6年生のあるクラスの生徒たちが書いた卒業文集。学校での思い出とともに先生への感謝に溢れた文章で…。なぜ名前の順に紹介されていないのかと、欠けている描写に気づいた時には、2度読んでいる作品です。
- 「恋之坂ナイトグライド」…知り合ったばかりの彼女は明日には家族で外国に行ってしまう。彼は噂の場所に行こうとする…。これも2度読んでしまった。2度目は色々と合点がいく事がある。危険すれすれのネーミングとかも好き。
- 「素敵な模型屋さん」…模型が大好きな少年は、いつか模型をたくさん買う事や、理想の模型屋さんに思いを馳せる。文字量の少ないのも嫌だけど、文字量が多くても森博嗣っぽくない、と変な事を思ったのでありました。