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バルーン・タウンの手毬唄 (創元推理文庫)

バルーン・タウンの手毬唄 (創元推理文庫)

妊婦探偵・暮林美央が大活躍する、バルーン・タウン・シリーズ第三弾。第一子妊娠中に出くわした事件を暖炉の前で回想して語る「バルーン・タウンの手毬唄」「幻の妊婦」の二編。ミステリ作家から出題された本格ミステリ短編の謎解きに挑む「読書するコップの謎」。バルーン・タウンで起こった密室盗難事件にまつわる陰謀を解決する「九か月では遅すぎる」。ユニークな四編を収録。


シリーズ第3弾。このシリーズは1作目から様々な有名ミステリのパロディネタが仕込まれていた(らしい)シリーズではあるが、本書では更に多くのパロディネタが入っている(らしい…)。なぜ「(らしい)」という憶測ばかりなのかというと、古典作品を全くといっていいほど読んでいない私にはネタ元が全くもって分からないからである。どうやら本書ではタイトルや名称だけでなく、新聞記者が過去の事件を取材する、という構成そのものもパロディの対象、らしいのだ。その構成自体がパロディとは知らない私は、連続して美央に3人目を妊娠させられないから過去の事件で急場を凌いでいるのか、と思っていた(ゴメンなさい)。
しかし負け惜しみなどではなく、本書はそういう「分かる人には分かる」パロディネタにばかり力が入り過ぎているようにも思えた。バルーン・タウンという作者が創出した特殊な環境の中で起こる特殊なSFミステリとしての作品の斬新さよりも、本歌取りにご執心なのが気になる。またシリーズ3作目で、短編も10編を超えたからか「妊婦」の特徴も手詰まりになっているような気がする。特に本書の短編では、お腹の大きさや形といった外面的な特徴しか取り上げられていない。もう一歩、この魅力的な世界観に踏み込んだ事件・真相を読みたかったところ。

  • 「バルーン・タウンの手毬唄」…数年前バルーン・タウン内で流行した手毬唄の歌詞に則した『見立て』強盗が多発。犯人が奪う物は「母子手帳」だけ…。なるほど牧歌的な町ならではの牧歌的な犯罪ではあるが、美央が居た2年弱の間にもこれだけ犯罪が多発する町なのか? シリーズモノ特有の矛盾。そういえば、多くの男性が妊婦に驚く時代とはいえ、旦那の居ぬ間に不倫とかもあるよね…。
  • 「幻の妊婦」…暮林美央の遅筆が招いた、担当編集者の上司殴打事件への疑惑。編集者は事件当時、バルーン・タウンで一人の妊婦と一緒に居たと証言するのだが…。真相を知ると犯行に不確定要素が多過ぎて納得できない部分が多く出てくる。容疑を彼に被せようとする小細工をしている割に、事件の発端も幻の妊婦の行動も犯人側が操作出来ないのは場当たりすぎでは…?
  • 「読書するコップの謎」…社会派から本格ミステリに転向を図る女流作家が自作の謎解きを(元)妊婦探偵に挑む。果たして美央はトリックを見破れるのか…? 作中作のトリックはシンプルながら伏線が鮮やかに張られていて感心した。ただ、このトリックが成立すると思うのは町の部外者の浅はかさかな。また作中作終了後の展開・会話が一癖あって面白い。タイトルの謎が解かれます。
  • 「九ヶ月では遅すぎる」…バルーン・タウンの公務員・高山女史に宝飾品窃盗の容疑がかけられる。宝飾品が保管された部屋への狭い通路は非・妊婦の彼女しか通れないからなのだが…。多分、シリーズ最多出場の高山女史の窮地。真相はと言うと、う〜ん、結局、妊婦の特徴ってソコに終始するよね…。性差や女性と社会の問題を指摘する文章も本書では少なめ。ちょっと物足りない。

バルーン・タウンの手毬唄バルーン・タウンのてまりうた   読了日:2008年05月22日