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4000年のアリバイ回廊 (光文社文庫)

4000年のアリバイ回廊 (光文社文庫)

室戸沖千メートルの深海で男の他殺体が発見された。被害者は、日本中が注目する縄文遺跡“高千穂ポンペイ”の発掘主任。発掘現場には当初、産廃処理施設の建設が予定されていたことから、その方面でのトラブルが殺人の動機と疑われるが…。一方、遺跡からも説明のつかない不可思議な発見が…。現代の謎と古代の謎が交錯する壮大な“魂の物語”。


ロマンである。4000年前、火山の噴火によりムラ全体が地の底に沈み、時を止めた遺跡の発掘から物語は始まる。コンピューターなどの最新技術を駆使した様々な科学的・学問的見地と、そして何より人の持つ想像力・思考力によって、4000年前、縄文時代のムラの人々の生活を現代に甦らせる過程には、知的興奮を覚えた。ただ、歴史「本格」ミステリとしては、ご多分に漏れず、歴史パートと本格ミステリパートは水と油のように(作者は混ぜたつもりでも、最終的には)分離している(ex.「QEDシリーズ」)。いつかマヨネーズのような渾然一体となった「歴史本格ミステリ」を読みたいものだ。お酢を入れればいいのかしら…!?
歴史パートは興味深く読めた。発掘された新生児の骨のDNAを調べてみると、その父親もまた生後一ヶ月に満たない新生児(!)である事が判明したり、遠方で殺人に使われた石器の一部を大事に奉っている毒のエキスパートがいたり、このムラの不可解な生活が次々に発見される。発掘される人骨や土器などの生活道具から、当時の精神活動を「推理」する様は、名探偵のソレと同じである。
ただ、とっても残念なのは、出だし。どれだけ多くの読者を挫折させたのだろうか。大変、読みにくい。現代の殺人事件の捜査は唐突に始まる。刑事は容疑者一人ずつのアリバイを、時刻表や地図を参照して証明する。しかし、被害者と容疑者たちの容貌・性格、被害者との関係の説明が無いままでのアリバイ捜査なので、非常に退屈。出だしのつまらなさが最大の欠点だと思う。もちろん、序盤の入念なアリバイ捜査に意味があるのは分かる。全員にアリバイ成立してしまう不可能犯罪に思わせられるし、(ネタバレ反転→)時刻表や地図の掲載は、交通機関を利用した単純なアリバイ工作だと思わせるのと、死体発見場所=犯人の向かった場所、と思わせるのためのミスディレクション(←)でもある。 そして真相。トリックには感心したが、動機が弱いと言わざるを得ない。もちろん不快感は感じるが、それが人を殺す事に繋がるかは非常に疑問。説得力不足。物語中盤になって、被害者の当日の足跡が分かるってのもご都合主義か。しかも、あんな便利機器で…。
ラストのラストはドラマティックではあるのだが、何故、ああいう状況の中で、あの場所に向かい、そこに居続けたのかは疑問。効果的ではあるが、残酷です。
余談:本書はどうやら、柄刀さんの長編デビュー作「3000年の密室(未読)」の続編的な性質を持つ作品らしい。読む順番を失敗してしまったようだ…。

4000年のアリバイ回廊4000ねんのアリバイかいろう   読了日:2006年10月25日