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どうもいたしません (幻冬舎文庫)

どうもいたしません (幻冬舎文庫)

ウィーンでは「切符もとむ」と大書したボール紙を持って物乞いし、飛行機の中ではとなりの席の人に「コンノミサコ」に間違えられ、ついたガムを取ろうとして逆上し、お気に入りのスカートをビリビリに引き裂いてしまう…檀ふみの悲しくもおかしな毎日。女優の毎日がこんなに失敗続きでいいのだろうか…。思わず吹き出す上質エッセイ。『日経流通新聞』連載「ありがとうございません」を改題し、加筆訂正して単行本化。


この作品は『ありがとうございません』の正統なる続編で、↑のあらすじにある通り、日経流通新聞に月1回『ありがとうございません』という題名で連載していたエッセイの約6年分が収録されている。新聞での連載は10年(!)も続いているらしい。初出が同じなので文章の構成も同じで、基本的な感想は『ありがとうございません』と同じです。1編が3ページなのでサクッと読めてしまう。前回は続けて何編も読んでしまって失敗したので、今回は「1回の読書につき5編」という縛りを自ら科して、ゆっくり味わって読んだ。この本に収録されている6年間、ダンフミは変わらない生活を送っている。テレビも見ない世捨て人、いや俗界と離れて暮らす仙女のような生活だ。その落ち着いた優雅さが文章から伝わっているようだった。6年間で変わったのは姪・甥の成長ぐらいだろうか…?遅筆に悩む女優ではあるが、粗製濫造ではない選び抜かれた言葉のしっとりとした美しさがある。
冒頭の「切符もとむ」もインパクトが強いが、誇張ではなくお腹を抱えて笑ったのが「痛み分け」。相手方の社長も社長だが、ダンフミの抜けっぷりは、かくも凄いのか!と思い知った1編。そしてちょっと驚いたのが「推薦文」の中の読書のスピード。なんと本1冊を3時間で読んでしまわれるらしい。そのトロさや遅筆ぶりから(失礼)、てっきり遅読だとばかり思っていた。意外な速さである。私にもその速さが欲しい…。また「悲しき雨女」での新たな雨女伝説や、「年頭の決意」での「ふみ(文)」へのこだわりは以前のエッセイでも触れていたが、年を追うごとにパワーアップしている気がした。強いこだわり・一心不乱・初志貫徹というダンフミの性格は「歩数計の奴隷」や「最初は善意」などにも著されていて、次は何にハマってしまうのか、心配ながら楽しみである。次のエッセイは、また6年後だろうか…!?

どうもいたしません   読了日:2006年04月21日