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まだふみもみず (幻冬舎文庫)

まだふみもみず (幻冬舎文庫)

大好きなイギリス、初舞台を踏んだオーストラリア、赤毛のアンのカナダなど外国での異文化体験。正月、節分、日本ならではの四季の喜び。誰にも言えなかった恋の話。能古島での父・檀一雄との別れ…。振り返るたびに顔が赤くなる、でもどこか切ない「出会いと別れ」の思い出をしっとりと、ユーモラスに描く好評エッセイ。


あとがきに書かれているように、この本に収録されているエッセイは旅行エッセイのような趣のモノが多い。海外で見たこと体験したこと、外国特有の文化、外から見えてくる日本のカタチなどが失敗談を織り込みながら綴られている。私が「まだふみもみず」の国内外の風景や文化を美しい「ふみ(文)」で読めるのは喜びである。ただアフリカの大地にしても、日本にずっと継がれてきた行事・伝統・品格などにしても、時代の波によって「まだふみもみず」ではなくて「もう二度と見れません」になってしまうのではないかと心配である。
品を保ちながらも面白いのが檀さんの文章。特に「誰にも言えなかった恋」の予想のつかないラストには大爆笑した。しっとりさせておいて、こんなコトを最後に書いてしまう女優の度胸に頭が下がる。また「旅は道連れ」を読んで「ああ言えばこう行く」で書かれていた檀ふみの母が涙を流して読んだという母との旅行エッセイはこれだったのかと納得。これでは母上も涙を流すだろう。母上が一方的に悪人である。「囲炉裏端の父」では父・檀一雄がエッセイで娘がいかに傍若無人であるかを書いたのを知り「作家というものはなんて身勝手でいい加減な生き物なのだろう」なんて書いているが、ご自分もその遺伝子・業をしっかりと継がれているのが可笑しかった。瀬戸内寂聴さんの解説にもあるが、その継がれた遺伝子で書かれた小説を是非読んでみたい。きっと、しっとりと美しい品のある素晴らしい小説になるのではないかと思うのだけれど…。

まだふみもみず   読了日:2005年12月29日