- 作者: 檀ふみ
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 1991/01
- メディア: 文庫
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仕事のこと、結婚のこと、家族のこと、友達のこと……。心温まる日常を父親ゆずりの文章力でほのぼのとユーモラスに描く。新しい自分に出会うために、しなやかな感性を弾ませて綴る、檀ふみはじめてのエッセイ集。
こっ、これが檀ふみさんの本来のお姿なのだろうかっ!と叫んだのは、最近のエッセイや言動に慣れ親しんでいる私の心である。そのぐらい20年以上前の檀ふみさんは現在のダンフミとは大きくかけ離れた存在であった…。
本書の文章は「ですます調」で結ばれていて、内容も失敗談も織り込まれているが至極おとなしいものである。いつも家族の話が多いのでエッセイでは控える、と書いておきながらも終始、家族の話を書いてしまう可愛い女性が本書の書き手だ。とても「スカートに付いたガムを取ろうとして逆上し、お気に入りのスカートをビリビリに引き裂いてしまう」女性と同一人物だとは思えない…(笑)
そういえば阿川佐和子さんとの共著『ああ言えばこう食う』の「おわりに」の阿川さんの文章にこんな言葉があった。いわく、檀さんの歴史は阿川さんに出会う前の「B・A(ビフォー・アガワ)」と出会った後の「A・A(アフター・アガワ)」の二つの時代に分かれるらしい。以下、檀さんの言葉。『B・A5年頃の私といえば、清純でおとなしく、かすかに翳のある知的女優として通っていたの。それなのに、アンタ(阿川佐和子さん)に出会ってA・A年号に代わって以来、私に与えられた美しいイメージが、ガタガタと音を立てて崩れ始めたんだわ』。なるほど、そうか。檀さんは20代後半で阿川さん出会ったらしいから、このエッセイが書かれた30歳前後の檀ふみの年号はA・Aではあるが、A・Aの2年か3年ぐらいなのであろう。だから、まだイメージが大きく崩れる前なのだ。スカートも引き裂かないし、ましてや便秘や下剤の話なんて以ての外である(笑) この頃の清純さが好きだった方にとっては、この女優の以後の変わり様には涙を流さずにはいられないだろう。けれど悪いのはダンフミではない。悪いのはきっと年号にも用いられているアガワサワコ、のはずだ。