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ありがとうございません (幻冬舎文庫)

ありがとうございません (幻冬舎文庫)

子どもの頃「どうぞ私をいい子にしてください」と毎晩神様にお祈りをして父・檀一雄に気味悪がられ、大人になってからも、銀行で自分のカードの暗証番号がわからず、警備員に尋ねて呆れられる…。女優・檀ふみが懐かしい思い出や身近で起きた出来事を、ユーモラスに綴るエッセイ集。読んでいるうちにじわじわと心が和む作品全68編を収録。


檀ふみさんは自らの子供時代を「ウルトラE難度級のいい子」だったと自称しているが、このエッセイには、その言葉がとても合う気がする。この本も「いいエッセイ」なのである。こう書くと、なんら面白みのないエッセイに思われるかもしれないので、誤解のなきように。このエッセイはとても面白いのです。檀ふみさんの行動や失敗は笑えて、文章には知的なユーモアがある。ただ1編が短くて、話題は1つに限られるので、起承転結が分かりやすい優等生的な「THE エッセイ」という感じは払拭できないのである。1つのエピソードがあって、その話を披露し、最後に自虐的なオチがくる、というのが基本パターンが出来上がっているのだ。だから1つ1つの話は面白くても、どうしても後半は味気なくなってしまうのだ。同じ物を食べ続けると飽きてしまうのと同じである。寝る前に1日2〜3編読んで、ホコホコした気分で寝るのが正しい楽しい読み方なんだろうけれど、いかんせんこのエッセイは楽しい。止められない。すると飽きてくる。面白いが故の不幸である。
私は檀ふみさんの文章が大好きである。どんなバカな話をしても、どんな失敗談を読んでも、どことなく溢れる気品。それは私の錯覚かもしれないが、読んでいて凛となる。美しい文章は美しい檀さんの精神の表れでしょうか。几帳面でありながらドジをし、女優ながら犬に歯を折られる、ダンフミの複雑な人格と性格はいくら読んでも理解できないものなのかもしれない。そして、そこがまた楽しい。

ありがとうございません   読了日:2005年09月10日