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シチュエーションパズルの攻防 (創元推理文庫)

シチュエーションパズルの攻防 (創元推理文庫)

大学入学を機に、叔母がママを務める銀座の文壇バーでアルバイトをすることになった了。その店『ミューズ』は、人気ミステリー作家・辻堂珊瑚朗先生(サンゴ先生)ご贔屓の店だった。普段は店のホステスにちょっかいを出しながら、バーボンと葉巻を楽しむサンゴ先生だが、ひとたび不思議な謎に出合うと、鮮やかな推理をさりげなく披露。「小僧」と呼ばれて可愛がられるようになった僕が遭遇した五つの謎と、サンゴ先生の鮮やかな推理。気鋭の作家が初めて挑戦する、安楽椅子探偵譚。


芦原すなおさんのミステリ『わが身世にふる、じじわかし』の解説が、芦原さんと交友のある竹内真さんで『今度は是非とも竹内さんにもミステリを書いて欲しい!』と書いたら、いとも簡単に叶った。ちょろいぜ、東京創元社(笑)
ミステリ初挑戦だからだろうか、全体的にぎこちなさが散見された。推理の手掛かりが後になって足されたり、繰り広げられる推理も膝を打つのを躊躇ってしまうものが多い。短編ミステリとしての切れ味は鈍い。しかし、その真相の裏に隠された人のドラマにまで考えを及ばすと作品の味わいはグンと増す。
多分それは珊瑚朗先生の探偵としてのスタンスにある。彼は探偵なのに「真相」を喋らない(笑) 舞台は銀座の文壇バー。実力と富と名声を得た珊瑚朗先生は、出版業界やホステスに「大作家」として扱われ「探偵役」として頼られ、自分もその様に振る舞う。そう出来るのが珊瑚朗先生だ。珊瑚朗先生は自分に求められた役を演じ、そして自分が最良だと思う「推理」を話す。それは時に人を安心させ、時に人を助け、時に人を成長させる。珊瑚朗先生の器の大きさを知った短編集。
まだまだ続きが読めるなら了の成長を見てみたい。頼むぜ、東京創元社(願)

  • クロロホルム厩火事」…文壇バーのホステスの一人が、銀座の裏道で拉致現場を目撃してしまう。恐怖に怯える彼女に珊瑚朗先生が語る「真相」とは…。真相に「なるほど」と思い、同時に珊瑚朗先生の凄さと、推理の真の意味を知る。だけど「何もこんな場所で…」と思わなくもない。警察沙汰になるのは問題でしょ。
  • 「シチュエーションパズルの攻防」…バーにファックス送信されたクイズ問題のような文章。その謎を巡って二人の作家が推理合戦を繰り広げる…。頭の体操編。珊瑚朗先生の推理が苦しい。真相もありふれている。しかし今度はアノ人の気遣いが見られる短編。こういうマメな気遣いが出来るのが銀座の夜の人々か。
  • ダブルヘッダーの伝説」…一日の間に珊瑚朗先生と藤沢先生の2人の作家のお相手をしたという伝説のホステス。その人物を特定しようとする了だったが…。了の探偵譚。ある単語で私の方が先に真相に辿り着いてしまった。しかし真相を知り、これは優しい伝説だなぁと彼らを好きになった。了も物好きである。
  • 「クリスマスカードの舞台裏」…若き日の珊瑚朗先生とミーコママが出会った日、出会いの場だったビル内で盗難騒ぎが起こって…。物体消失のトリックは使い古されたものかも。二人の出会いが早くも読めたのが嬉しい。なら珊瑚朗先生はミーコママの大よその年齢知ってるのね。ここでも黙ってるのか珊瑚朗先生。
  • 「アームチェアの極意」…賑やかなバーの中、独りカウンターに座る人物の悩みは…。無頼というよりも頼られきっている珊瑚朗先生。面倒見も良い人。セクハラさえなければ完璧!? 願いが叶うならば、いつか珊瑚朗先生の作品を読みたい。

シチュエーションパズルの攻防シチュエーションパズルのこうぼう   読了日:2008年07月22日