《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

ぼくが生まれた日、ばあちゃんが捨てられていた子犬を拾ってきた。その名はオアシス。ボーダーコリーのミックスらしく、陽気でやさしく、不思議な力を持った犬だった!その日からぼくらはいっしょに育ち、わが家の笑いと涙はいつもオアシスとともにあった。初恋だって、冒険だって、新聞に載っちゃうような大事件だって…。とぼけた顔をして生き物から宝物までなんでも拾ってきてしまう犬オアシスと、その飼い主一家が巻き起こす珍事件・大騒動の数々を綴る、ほのぼの成長物語。はた万次郎氏のイラストを多数収録。解説:芦原すなお


幸福な空気に満ち満ちている作品。竹内作品を読了し、本を閉じる時の温かい気持ちは何とも言えず心地良い。登場人物たちの自然体の姿が描かれているだけなのに、正しい生き方・精神を学んだ気になる。これが竹内作品最大の魅力だろう。大袈裟に言うと人生って素晴らしいかも、と思えてくるのだ。
本書は主人公の「ぼく」と、「ぼく」が生まれた日に拾われた犬のオアシスの物語である。作中には主人公が生まれた日から16歳の日までの中でオアシスが起こした数々の騒動が描かれている。元々「朝日中学生ウィークリー」に連載されていた作品。なので最終話の16歳の主人公の姿は、主な読者層である中学生たちには少し先の未来の話となる。これが計算なのか自然の成り行きかは分からないが、この辺りが竹内さんは上手いな〜、と思う。中学生たちの過去から少し先の未来まで、「全てが大丈夫だよ」という優しい後押しのように感じられるのだ。年齢を重ねる主人公がオアシスと次々に体験する事件だけでなく、主人公の精神的な成長にもしっかりと歩みを共にするのではないか。それは嬉しい事・楽しい事だけではなく、少しだけ辛い事・悲しい事も。でもそれもこれも含めて「生きる」という事なのだ、という事を本書は自然に教えてくれているようだった。
作品のメインとなるのは勿論オアシスの騒動の顛末なのだが、私は物語の後ろ側にある温かい空気が大好きだった。例えば主人公、そしてオアシスの家族・家庭である。オアシスの正当な飼い主であるばあちゃんは、いつもオアシスの一番の理解者として東奔西走してくれる。そして主人公の両親。ばあちゃんの息子である父は歯に衣着せられない物言いをしていつも顰蹙を買う。そして優しい母は主人公に絵を描く喜びを教えてくれた。ちなみに、じいちゃんは時々しか家に帰って来ない。この家族に囲まれて育った主人公とオアシスは真っ直ぐに育つ。動物と共に育った子は良い子に育つ、と言うがこの主人公の場合、例えオアシスがいなくてもこの家族の中で素直に育っただろう。しかしオアシスが主人公や家族の喜びを何倍にも何十倍にもしてくれた。主人公の人生はオアシスと共に…。
人間の16歳はまだまだ成長過程の途中であるが、犬の16歳は人間に換算すると相当な高齢になる。実は最終話は切ない話、いや、切なくなる前の話である。しかし主人公は、別れすら人生に於いては「当然の事」として消化出来るまでに成長したという事を私たち読者は理解している。だから少し悲しいけれど、でも彼らの「生」をしっかり記憶しながら本を閉じる事が出来る。直接的な悲しみの描写よりも長く長く余韻を残す終わり方であった。そして優しい優しい終わり方だった。

オアシス 不思議な犬と少年の日々オアシス ふしぎないぬとしょうねんのひび   読了日:2009年01月09日