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この島でいちばん高いところ (祥伝社文庫)

この島でいちばん高いところ (祥伝社文庫)

「少し離れた小島に、遠浅のきれいな海岸があるからね」夏休みに二泊三日の海水浴に出かけた十七歳の少女五人。無人島に渡った彼女らは、砂浜の美しさに酔いしれるあまり帰りの船に乗り遅れ、その島で一晩過ごすことに。ところが、島にはもう一人、男が潜んでいた!―理不尽な体験を通し、少女から大人に変わる瞬間を瑞々しい感性で描く傑作ミステリー。


再読。やっぱりこの本は苦手だ。救いがない。唐突なエピローグにも彼女たちが体験した事があまり反映されていない。人の心を描くのが上手いはずの近藤さんらしくもなかった。物語に緊張感はあるのだけれど、どうしても次、次という軽い印象が拭えない。あらすじに「ミステリー」と書かれているけれども、それが広義のミステリーである事も裏切られた。少女たちが自分たちの境遇や苦難に対して、知恵を以って乗り越えようとするのなら面白みもあったのだろうけれど、理不尽な暴力に暴力のみで対抗してしまった。それが真っ直ぐな心を象徴しているのかもしれないが、愚行にも感じられる。いかんせん本が短すぎるのだ。どの登場人物も私がキャラクタを掴む前に物語が終わってしまった。
この本は競作「無人島」の4作品の1つ。他は西澤保彦さんの『なつこ、孤島に囚われ。』恩田陸さんの『puzzle』歌野晶午さんの『生存者、一名』(未読)。恐らくこの企画は読者の支持を得なかっただろう、と推測される…。企画そのものと値段は良くても、出来た作品が安かろう悪かろうでは、ファンにとってこれほど残念な事は無いだろう…。このぐらいの中編でも、とても面白い作品はあるのに、縛りを作ったために作品に個性が出せなかったような気がする。全てが残念。

この島でいちばん高いところこのしまでいちばんたかいところ   読了日:2001年12月06日