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白い家の殺人 (講談社文庫)

白い家の殺人 (講談社文庫)

冬の八ケ岳山麓の別荘で、深夜、可憐な女子高校生の死体が発見される。現場は密室状態で、不可能犯罪に見える。そこへ、青年探偵・信濃譲二が登場して調査を開始すると、それをあざ笑うかのように、またもや惨劇が。しかし、われらが探偵の名推理が冴えて。新本格派、渾身の長編推理第二弾。


「デビュー作」は、単純だが作者渾身のトリックで、見破られる事を半ば覚悟しながらも発表せずにはいられない若い情熱を感じたが、本書では情熱も大胆さも感じなかった。実験的なトリックでもなければ、わずかな齟齬から真相を導き出す「本格」の作品でもない。読後の感想は、雑なミステリだ…。本書に解説が無いのは、誉める箇所に困るからではないかと邪推するほど、不満や欠点の多い作品。
まず、登場人物の設定が酷い。クローズド・サークルを創出させるためとは言え、殺人事件が起きても醜聞を恐れ警察の介入を拒み、自分達は事件について一切の行動も思考もしない。果ては、その場に居もしない人間を動機のみから犯人に仕立て上げ、それで安心してしまう。ミステリには、ラストの謎解きで意外な犯人を演出させるためのミスリーディングは必要であるが、ここまであからさまで、長々に、短絡的に犯人を仕立て上げる展開には辟易した。
私は、ミステリは全体的に地味な謎や展開でも、犯行に対し登場人物が思考の限りを尽くして行動し、その上で犯人はその裏を、探偵役は盲点・齟齬を突いてくる作品が好きだ。しかし、この作品は探偵・ワトソン役以外の思考が無い。ワトソン役の一之瀬徹でさえ、役回りとはいえ短絡的過ぎて読んでいられない。信濃も好きじゃないが…。また、ミステリでは作中で宗教を取り扱う作品も多いが、本書の宗教の扱われ方は酷かった。作品に大きく関わっていればいいが、本書には宗教の登場の必要性を感じなかった。一体、何の意味があるのだろうか…。
アンバランスだったのは動機に対する犯行の稚拙さ。終盤に長々と動機が語られ、犯行に至る経緯が語られるのだが、その割に犯行計画・内容は非常に杜撰なのである。犯人が用意したトリック・ミスディレクション・犯行後の行動予定の全てに説得力がないのだ。犯行も、作品全体の構成も非常に大雑把な印象が残る。

白い家の殺人しろいいえのさつじん   読了日:2006年10月04日