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王妃の館 上 (集英社文庫)

王妃の館 上 (集英社文庫)

思いっきり笑えて泣ける、人情巨編。150万円の贅沢三昧ツアーと、19万8千円の格安ツアー。対照的な二つのツアー客を、パリの超高級ホテルに同宿させる!? 倒産寸前の旅行会社が企てた、“料金二重取りツアー"のゆくえは…。


あの「泣かせ」の浅田次郎が「笑い」に転向したとの触れ込みですが、どこもかしこも抱腹絶倒とはいきません…。本書の肝は、倒産寸前の旅行会社が背水の陣で編み出した商売は、150万と20万の企画を同時に進行するというスラップスティックなコメディなのだが、これがどうにもドキドキしないのである。二つの企画は「光(ポジ)」と「影(ネガ)」と命名され、同時に「王妃の館(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)」に泊まらせるという倒産を回避するための苦肉の策。一つには150万相当と思わせるコースを、もう一つは20万に見合ったプランを用意し、「王妃の館」を昼と夜とで使い分ける。パリのそこここでニアミスしている、というのが味噌だと思うが、どうも二つ同時進行が上手くいっていない気がする。読んでいて、どうも腰が落ち着かない。旅行社社員以外の人が騙されているから同情してしまうからだろうか?登場人物が紋切り型だからだろうか?以前読んで大変感動した「プリズンホテル」シリーズの出来を期待して読んだからだろうか?
このドタバタの他に登場人物の一人である小説家が書く小説が挿話されている。これは何の意味があるのかよく分からなかった(小説を長くするためか?)が、こちらの方が面白い。独立して読みたかったぐらい。 この話の結末はどのようなものになるのか、果たしてドキドキさせてくれるのだろうか。結果は下巻で。

王妃の館(上)おうひのやかた   読了日:2002年09月05日