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キッドナップ・ツアー (新潮文庫)

キッドナップ・ツアー (新潮文庫)

五年生の夏休みの第一日目、私はユウカイ(=キッドナップ)された。犯人は二か月前から家にいなくなっていたおとうさん。だらしなくて、情けなくて、お金もない。そんなおとうさんに連れ出されて、私の夏休みは一体どうなっちゃうの? 海水浴に肝試し、キャンプに自転車泥棒。ちょっとクールな女の子ハルと、ろくでもない父親の、ひと夏のユウカイ旅行。私たちのための夏休み小説。


なんて生意気な子だろう!自分の娘がこんな風に育った日には可愛がれないかも…(要らぬ心配)。一番気になったのは言葉遣いの乱暴さかな。小学校五年生にしては大人びた言葉や表現を使うなと思っていたら、「ふざけんな」ときたもんだ。言葉の乱れは、心の乱れですよ。でもやっぱりこの子(ハル)が次第に丸くなる様は微笑ましいし、この旅の終わりにはたっぷりと感情移入をしている自分がいる。ハルの父への書き口はとても悪いけれども、やっぱりどこか佇まいがカッコいい父も発見する。この父はどこかセクシー(笑)なんだろうな、と思ってしまう。この旅でハルは決してお父さん子になった訳ではないのだろう。友達と楽しそうに話す見知らぬ父や、段取りの悪いカッコ悪い父も受け入れられるようになったという事。つまり他人との距離を適正に測れて、また他人の大事さを学んだのだろう。波乱万丈なユウカイではあるけれども、楽しい旅だと思う。羨ましい。
旅は急に終わる。結局、父の目的は明らかにされていない。児童文学を念頭に置いた場合は不必要な要素だろうし、ある程度大人の読者には察してください、って事なんだろう。でも何だったんだろう。重松清さんの解説や未熟な読解力からして想像はつくけど、正解なのかどうか分からないのがもどかしい。

キッドナップ・ツアー   読了日:2005年02月09日