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オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

人口わずか三百人。主な産物はカンピョウ、ヘラチョンペ、オロロ豆。超過疎化にあえぐ日本の秘境・大牛郡牛穴村が、村の起死回生を賭けて立ち上がった! ところが手を組んだ相手は倒産寸前のプロダクション、ユニバーサル広告社。この最弱タッグによる、やぶれかぶれの村おこし大作戦『牛穴村 新発売キャンペーン』が、今始まる…。第十回小説すばる新人賞受賞、ユーモア小説の傑作。


読書中、常に既視感がまとわりつく。予想通りの展開、お決まりの結末。だが、その物語の中にもキラリと光る小説家としての技量やユーモアセンスが見え隠れする。そして本当のラストは誰にも予測がつかないはず。本書はユーモア小説だけれど人情小説で、かつ業界小説。更には現代日本の風潮もメッタ斬る。ラストにはミステリ顔負けのどんでん返し(伏線もある!?)。
↑のあらすじ通り、お先真っ暗な過疎の村と広告会社が偶然にも村おこしのためタッグを組んだ。だが広告会社が企んだ戦略はまるで子供のいたずら、狼少年方式。だが平和なニッポンは絶滅したはずの「狼」が出現したとエサを流せば、マスコミ業界がまずそれに喰い付く。エサに喰い付いたマスコミは勝手に大暴れをし始めるが、その大暴れが波紋を呼び、次はその見物にマスが混み合うという三段逆スライド方式(意味無しジョーク)。村おこしの方法としては最も安直な方法だが最も安価で安全。案ずるのはエサを撒く方法だけ、後は安楽椅子に座ってテレビを見てれば良い。個々ではマイナスとマイナスの存在だった寂れた村と潰れる会社だったが、お互いを掛け合わせればプラスに転じるらしい。
ユーモア小説として読むとこの展開は上手くいき過ぎてご都合主義とも思えるが、危ぶむべきは平和なニッポンである。本書を風刺小説として読んだ場合、ユーモアが一転、決して笑えない。川にアザラシが出現すれば連日報道、ヤンチャなボクサーやお相撲さんがいれば連日報道、熟女芸能人同士が喧嘩をすれば連日報道するのがニッポンのマスコミである。一度火が点いた話題は瞬く間に人々に伝播する。中盤、お祭り騒ぎの中でその裏に描かれている広告業界の内幕、マスコミに踊る阿呆に見る阿呆を揶揄している点は笑えるようで、実は笑えない。
が、マスコミ主導の話題は瞬く間に広がるが瞬く間に鎮火してしまうのも事実。マスコミが団扇を振り続けてくれないと火は弱まってしまうのだ。が、本書の面白さはココからだと私は思う。意気消沈した彼らに残ったのはメッキの剥がれた元来の輝きと絆。解説でも触れられていたが、この後の荻原作品に多く見られるの奇妙な心の疎通が描かれている。最初こそ、社員と牛穴村住人たちは一蓮托生、運命共同体的な関係でしかなかったが、中盤、広告社の社員たちは結束力を強め、村人と社員たちの関係も信頼関係に発展していく。表面上の面白さ以外に人の心の機微が描かれている点に荻原浩の小説家としての地力を感じた(>偉そう)。

オロロ畑でつかまえてオロロばたけでつかまえて   読了日:2009年07月16日