《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

その優しさに惚れたから その優しさを頼りにして いつまでも甘えてしまいそう。

ストロボ・エッジ 2 (マーガレットコミックスDIGITAL)
咲坂 伊緒(さきさか いお)
ストロボ・エッジ
第2巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★☆(9点)

蓮への気持ちが恋だと気づいた仁菜子。彼女がいると知っても初めて知った気持をただ伝えたくて蓮へ告白する。ふられてしまうが、友達としてつきあうことに。新学期、仁菜子の告白を目撃した安堂と知り合う。蓮と3人は文化祭実行委員会で一緒。蓮を好きな気持を持ち続ける仁菜子と動き始めるみんなの気持…! 蓮と彼女・麻由香の恋模様を描いた番外編も収録。

簡潔完結感想文

  • 告白失敗。でも想いは霧散せずに胸に「好き」が積もる。
  • 蓮の彼女との遭遇。勝てない、いや闘いにもならない無力感。
  • 蓮の遠距離。安堂の近距離。拭い切れない安堂の当て馬感。


本書の特異性はその構成だろう。
1巻丸々使って胸に留めておけないぐらい恋心を募らせた仁菜子だったが、2巻早々告白し、そして断られる。
さらには2巻の中では想い人の「彼女」まで登場する。
2巻あたりで「元カノ」が登場して、嫉妬や独占欲に燃え上がるという展開は幾度も見たが、現在進行形の彼女がいるのはあまりない。
やはり本書は片想いの物語なのである。


上記の通り夏休み前に蓮くんに告白したけれど見事に玉砕した仁菜子。
でも彼女にはなれなくても「好き」は降り積もることを知り、学校生活の中で蓮と関わり、彼の実直さや優しさにまた触れていく。
失恋の後でもこの前向きさが清々しい。

物語としては少しも動かないし、告白の不成功や蓮の彼女の登場で彼女の恋路は袋小路にすら入っている状態だ。
この息が詰まりそうな状況においても仁菜子は自分の中の気持ちに正直に生きる。
仁菜子と同じように蓮に告白して断られた「ふられんぼ同盟」に対する仁菜子の態度でまた彼女の好感度が上がる。
自己防衛も含めて蓮を逆恨みする事で自分の傷を浅く見せかけようとする彼女たちに対して、蓮への想い全てを肯定する仁菜子は偉い。

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蓮を逆恨みする女生徒とは一線を画す仁菜子
ただ、仁菜子の方から「友達」を申し込んでその後も果敢に話しかける様子は、間近で見てたら未練がましく思えるかもしれない。
蓮の優しさに乗っかってることは仁菜子にも分かっているみたいだし。

しかし仁菜子は大粒の涙を流しますね。最初見た時、コンタクトが取れたのかと思うぐらい(笑)
でも、その大粒の涙には感情の奔流が詰まっていて、彼女の全身全霊の嘘偽りのない涙なんだろうな、と思える。


2巻では本書の重要人物の一人である安堂くんが初登場。
周回すると、この時点での安堂は蓮との会話も軽妙で、二人の間にそこまで険悪な雰囲気はない。

ただ後半、安堂が仁菜子と関わるにつれて、仁菜子への蓮の態度などに苛立ち、蓮に反目する場面が多くなっていく。
読者からはお邪魔虫としか思えないが、安堂が蓮に言う事は、彼女のいるお前が仁菜子ちゃんに今まで通り接するのが優しさなのかと問うている。
その意味では誰よりも現実的な人とも言える。
そして物語終盤の仁菜子への行動を見ると感情の抑制が効かない感性の人なのかもしれない…。


中盤で登場するのは『1巻』でもその姿を見かけていた蓮の彼女・麻由香。
直接対面する仁菜子だったが、そもそもが同級生・大樹の姉であるから敵意はない。

更には彼女の人間性や蓮との関係性を目の当たりにして精神的ショックを受ける仁菜子。
作者の上手い所は、簡単に分かりやすい悪を生み出さない所ですね。
麻由香が嫌な人なら仁菜子のモヤモヤとした気持ちの避難先が出来るのに、それすら塞いでしまう。
この辺りが上手いですよね。
登場人物みんなが、真剣に誰かを想う世界なのだ。
だからこそ嬉しい瞬間があり、だからこそ立ち入れない領域があって遣る瀬無い気持ちが生まれる。

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仁菜子の心情を慮って 彼女の手を引く安堂
蓮が仁菜子を目で追いかける場面で、不安がこみ上げる麻由香。
彼女も実弟の大樹と同じで、好きな人をずっと見続けていたからこそ、その人の気持ちが動いている事を見抜いたのかもしれない。
敏感過ぎて不憫な姉弟だ…。


仁菜子の失恋の裏で、仁菜子の友人・さゆりと大樹は徐々に距離を近づけている。
仁菜子の恋が蓮に近づくどころか遠ざかってしまった現時点では、上手くいきそうで進まない歯痒さを味わえるカップルだ。
作中だと一瞬で夏休みが消化されているので、大樹の失恋から2か月ぐらい経ってはいるのだろうが、なんとなく変わり身の早い大樹という気持ちも拭えない。
そしてこの後の大樹カップルの動きは正直、興味が薄い。
まぁ彼らの役割は、物語という生命の動的部分で新陳代謝だろうか(伝わります?)


ストロボ・エッジーanother lightー』…
蓮と、2歳年上の恋人・麻由香のなれそめ。当初の蓮は中2で背も低くてまだまだ少年っぽい。
でも今と変わらず体温低めでも心根は温かい人。
本編では麻由香は邪魔な存在であるけれど、ここにあるのもまた一つの恋である。
意地の悪い見方をすれば、寄り添う心はあっても「好き」という直接的な言葉はない。
これは仁菜子用に取っておいたのかな。
また家庭環境の変化で麻由香が弱っていることを知ったから蓮は寄り添い始めたのかな、という疑念もある。
そこにあったのは愛ではなく庇護なのかもしれない。