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少女漫画と小説の感想ブログです

少年漫画のような固有スキルの把握と、その合間にイチャラブする少女漫画のノルマ

電撃デイジー(13) (フラワーコミックス)
最富 キョウスケ(もとみ キョウスケ)
電撃デイジー(でんげきデイジー)
第13巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

謎の男・アントラからもたらされた「Mの遺言の鍵」、暗号化されたそれの解読を試みる黒崎たち。仲間の結束も固まり全てが順調に見えたが…!?

簡潔完結感想文

  • ラスボス戦の前にチーム内の結束を高める修行巻。照に出来るのはメイドとイチャラブ。
  • 黒崎に続いて照もアキラの能力と苦悩を知る。知ったからには救うのがヒロインの役目。
  • 照の携帯電話には やっぱり奏一郎の遺産が!? 最後の最後に頼るのはアナログという話か。

チャラブがあれば複雑で難解で強引な話も耐えられます、の 13巻。

『13巻』はラスボス・アントラの心理攻撃を見抜き、それに対抗する心理を獲得する少女漫画的な修行巻だと言える。心を操る相手のスキルに気が付き、その対抗策を得るために今や多くの人の心の中心にいる照(てる)の兄・奏一郎(そういちろう)が疑似的に甦る。もう会えない人に会うこと、その人に現状を報告することでチームの精神は安定し、アントラにも負けない状況が生まれる。

私は頭が悪すぎて、どうして照たちが「Mの遺言」に介入するのか その大義が分からない。特に『13巻』では国の機関が動いていることが分かり、彼らが動いているならば素人集団が動く必要性は無いじゃないかと思ってしまう。作者は今後の展開を考えて この機関を出したのだろうけど、いたずらに登場人物を増やすだけだし、チームの必要性も薄れる。チーム内の誰も「Mの遺言」との関係性がないのは作品の弱点だろう。せめて機関が動いてくれないから独立組織としてチームが動くのなら分かるけど玲奈編以上に照たちが動く動機が不足している。

機関とか組織とか えらい大きい風呂敷でんな~。誰が望んだ話ですのん??

戦力の把握が『13巻』では描かれている。上述の通りアントラは心を操るし、また2回目のアキラの暗号解読能力があることで黒崎(クロサキ)は彼の能力を確信している。そして大事なのは照がアキラの人間としての弱さを見ること。憎むべき相手だけど救われるべき相手だと照が思うことで照はアキラとの向き合い方を模索する。暗号や遺言に関しては無力な照だけれど その優しさで彼女はヒロインになる。

ただ照をちゃんと中心に戻すために彼女の携帯電話を暗号の鍵の鍵にしている。これまでも何度も狙われ続けた照の携帯電話に どうにか意味を付与するために作者はアナログな手法に頼る。もう それでしか この携帯電話を有効に使えなかったのだろう。壮大な話の中に苦肉の策が見えてしまうのが本書の完成度の低さだろう。だから事件を真面目に読む気にならない。申し訳ないけれど事件は確固とした世界観のもとに作られたものではなく少女漫画レベルの中の上位でしかない。

大きな事件の前には説明ゼリフが多くなるのが本書の欠点。説明の堅苦しさ読者が離れていかないように合間合間に照と黒崎のイチャラブがノルマのように挿入されている。イチャラブというオアシスがあれば読者は情報砂漠も耐えてくれるのだろう。
でも特に2人の関係性を好きだと思えない私は(嫌いじゃないけれど)、告白しないまま「キスするする詐欺」を繰り返す2人の様子を冷ややかに見えてしまう。寸止めの顔も三度まで と言いたくなる。

『13巻』のMVPは理子(りこ)だろう。姉のように照と黒崎のメンタルをケアして、彼らから本音を引き出すことで本音が引き出されない環境が用意されていたことに気づく。それがアントラの能力と対抗手段の気づきとなる。そのご褒美のように理子に奏一郎から贈られる言葉と物があった。

黒崎に過去を作って作品の奥行きを作ったように、奏一郎は当初より人間的 能力的に大きな人物になっているように見える。アントラが各人の中にいる奏一郎への愛を利用したら全員が簡単に間違った方向に進むのではないかと思うほど奏一郎の存在は大きい。人は死んだら仏になるかもしれないけれど奏一郎は神に近い存在と言える。


情やリスク、総合的な観点からチームは「Mの遺言」の解読に挑むことに決める。照に出来ることは特になく、お茶汲み要員に見える。解析のためにスーパーコンピュータが必要で竹田(たけだ)が正式に仲間になる。単発の敵から準レギュラーに華麗なる転身だ。竹田は過去の悪事を雪(そそ)ぐために悪事が露見するデータを誠意の証とする。


よりも「Mの遺言」に執着しているのがアキラ。その解析の鍵を求めて荒事に出る。再び照が襲われるけれど、キスやエレベーターの暴力の過去2回と違い、3回目の照は暴れるだけのアキラを精神的に制圧する。そして豪華客船内で黒崎が見たように、照もアキラの不安定な体調とメンタル、そして瞬時に暗号を解読する能力を目の当たりにする。しかし なぜアキラは鍵の在り処を的確に把握しているのか謎だ…。

アキラが暗号を見たことで彼が有利となる。黒崎はアキラの能力をスパコン以上の「超演算能力」と名付ける。少年漫画のバトルスキルのような感じになっている。

ヒロインの弱点は男性の涙。弱った男性を助けずにはいられないヒロインの習性

状をチームは総務省の「機関」の人々と共有する。黒崎にまつわる過去の因縁があることもあり、2つの組織は衝突しながら議論を進める。特に一介の高校生である照に厳しく、彼女が訴えるアキラの素性や緑川(みどりかわ)教授との関連性の調査の要望は無視される。

アキラのことを考えて照は知恵熱を出す。理子(りこ)はストレスに晒された照、そして黒崎のケアをする。照は優しさから、黒崎は自分と重ねてアキラのことを切り捨てられない。そんな本音を黒崎から聞き出して、理子は それを許さない雰囲気が醸成されていることに気づく。それは『12巻』で「アントラ」に遠隔でチーム内の雰囲気を操作されていた状況に似ているのだ。そこに理子が気づくのはカウンセラーで専門知識を持つからか。


子が分析する「アントラ」の能力は洗脳。人の心の支配ではなく誘導が上手。しかも自分の中の正義感などを刺激するため誰もが無意識に誘導されてしまう。だからこそ危険性が高い。

ただしアントラがチームに それを仕掛けたことがアントラが目を逸らせようとした何かがあると踏む。そこで重要なアイテムになるのが兄・奏一郎(そういちろう)から贈られた照の携帯電話。といっても その中にデータやソフトが無いことは2回も描かれている。序盤の作者が その後の作者の首を絞めているのか。けれど照を物語の中心に据えるため、アナログな手段が残されていたと やや苦肉の策が示される。それが奏一郎の手書きのメッセージ。一見ただの照の学校名とクラスと名前が書かれているだけだが、その情報には誤りがある(ここで舞台となっていた学校が私立だと確定する)。

それが奏一郎からの暗号だと照は気付く。ただ高校生になった照を見届けられなかった奏一郎だから偶然にもクラスと出席番号が被るリスクもあるのではないか。でも照の名字の紅林(くればやし)の出席番号が33番なのは不自然か。一時 チハルたちの手に奪われた時に その違和感に気づかれていたら先回りされていたのか(その時には こんな裏設定を作っていなかっただろうけど)。

こうして「Mの遺言」の前に奏一郎の遺言とも取れるメッセージが届く。仲間を一人また一人 失いながら真実に辿り着く照(誇張あり)。照よりも理子が奏一郎と もう一度 会えたことに感動する。