《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

殴られても立ち上がりトラウマの克服。殴られた照を見ても殴り返さない成長の証明

電撃デイジー(15) (フラワーコミックス)
最富 キョウスケ(もとみ キョウスケ)
電撃デイジー(でんげきデイジー)
第15巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

「Mの遺言」の本当の内容、アキラの真実などつぎつぎと明らかになるなか何者かに攫われた照を救うために黒崎が仲間が友人達が立ち上がる...! 照を救いアキラを救うことが全てを救うことになると信じて「運命の一日」が始まる...!!

簡潔完結感想文

  • 荒れた若者を自分の全存在をかけて変えようとする行為は緑川教授や奏一郎の通ったのと同じ道。
  • 薬を与えなければ苦痛と共に死ぬアキラを わざわざ爆死させようとする穴だらけの「Mの遺言」。
  • チハルは場を照と黒崎だけにする手伝いをし、機密情報を喋って危機を演出する「説明おばさん」。

き人の想いは次世代に繋がる、の 15巻。

色々と綻(ほころ)びを見せながら緊迫した場面が連続する『15巻』。
大変 良かったのは照(てる)、そして黒崎(クロサキ)のアキラとの対峙場面。ここでは過去2人が呑み込まれた感情に呑み込まれないことが描かれ、それが以前と違う彼らの姿を明確にさせる

照にとってアキラはトラウマの象徴。最初の強引なキスという性暴力に続きエレベーター内では暴力を振るわれた。その2つが照にアキラへの恐怖を植えつけ、あの照を彼には優しくなれないという心境にさせた。それでも照は最善の一手のために自分を奮ってアキラの前に立たせる。そこで言葉が届かなくても偽善であっても殴られても照は強い気持ちを保持し続けてアキラに言葉を届ける。そうやって何度も何度もアキラに感情をぶつけながら分かり合っていくアナログな手法は、かつてアキラが緑川(みどりかわ)教授から与えられた愛情に似ている

そして黒崎にとってアキラは過去の自分であり、照を傷つけた罪人。エレベーター事件では傷ついた照を見て頭に血が上った黒崎が圧倒的な暴力でアキラを制圧した。しかし今回、同じように照にアキラから暴力を振るわれ力尽きた状況でも黒崎は暴力という手段を使わない。アキラから事情を聞き、照の生存を確かめた後に、自分が本当に死ぬ恐怖に呑まれるアキラに優しく手を伸ばす。それは かつて激情に身を任せ、その弱さから罪を背負った黒崎に対して照の兄・奏一郎(そういちろう)が示してくれた愛情に似ている。あの時、守ってくれた人の恩に報いることが出来なかった黒崎だけど こうして今は自分より少し年下の人に対して罪を償う人生を与えている。

自分に対して薬を用いたり、冷ややかな目をぶつけるのではなく、人間として向き合ってくれることがアキラの絶望を解く鍵となり得るのだ。緑川教授を失っても照と黒崎、そして自分の救出に動いてくれた人たちがいる限りアキラの心は落ち着きを取り戻すだろう。その過程で2人が過去を乗り越えるシーンを用意していることに深く感動した。

暴力と言葉で精神をズタボロにされる照。偽善かもしれない迷いが確かにある

者もきっと このシーンが描きたくて手を尽くしたのだと思う。
…それは分かるのだけど、そのシーンのために色々と強引で無理矢理で牽強付会なところが随分とある。そもそもアキラ抹殺の「Mの遺言」が まどろっこしい。作品側がアキラの脳に病変を用意するなら彼の身体を拘束していれば それだけで問題はなかった。なぜ島ごと爆破する計画が必要なのか、その欠陥だらけの計画に対するエクスキューズが全く用意されていない。アキラの有用性を理解する者たちのアキラへの冷酷な仕打ちもデフォルメしすぎている。

またアキラに対峙するのを照と黒崎に限定し、その順番でアキラと会わせるための流れも ちょっと強引。黒崎らチームの面々がそれぞれ活躍する最終決戦だけどマスターの活躍は ほぼゼロなのが可哀想。
そしてマスターを無力化するチハルも物語に必要な情報を提供する役目の方がはるかに大きい。ベラベラと機密情報を喋ることで黒崎が知らないことを伝え危機感を演出している。作品の盛り上がりのために口の軽い女に成り果てているように見える。そうする動機としてチハルなりのアキラへの愛情が垣間見られる時もあったけれど、それにしても彼女の独白は無理がある。

照がアキラに向かい合う理由をヒロインの優しさにしなかったことは少女漫画らしからぬリアルとシビアさで好きだ。だけど結局 照と黒崎を物語の主役にするために大きな計画を穴だらけにしている。真面目に考えたら負けのような内容だけど、多くの読者が真面目に考えないから表面上の緊迫感だけで評価されているように思えてならない。

ラストの展開の大幅な加点を帳消しにするぐらい大幅な減点のある作品。この減点がなければ佳作や名作と言えたのに残念だ。


が総務省機関内の内通者・河野(こうの)によって拉致される。河野は怪我を負うことで別の実行犯を仕立て上げる。『12巻』の豪華客船の森園(もりぞの)と同じようにアントラは河野に仕える振りをして彼をコントロールしていた。河野を殴ったのもアントラ。アントラは照を監禁場所まで連れて行き、薬で半日の自由を奪った後 どこか照に期待する言葉を残して その場を去る。

河野は事情聴取にも反省の色を見せ、照の救出を最優先にする正義感を使って「Mの遺言」発動阻止の阻止を狙う。黒崎はアントラのように自分の精神を支配する河野に照の安全を最優先にするよう吹き込まれそうになるが、河野を怪しんでいる安藤(あんどう)が河野の企みを防ごうと間に入る。それに対してチームのメンバーは安藤の照救出案を否定。チームは空中分解の危機に陥る。

けれど それは阿吽の呼吸で おとり捜査を開始し河野の自滅を待つ作戦となった。裏切りから1話で活躍が終わった河野は照がいる場所が無人島であると自白する。


の無人島はアキラを知っている人間を集合させ島ごと爆発させるプランで使われるものだった。現に照に加えてアキラも その島に到着している。爆死のリスクを知っても尚、黒崎は島に向かう。ヘリ移動のため人数が限られていることもあってチームからは黒崎とマスターが島に乗り込む。

薬が切れ始め再び目覚めた照は孤独な状況に恐怖を覚えるが、すぐに落ち着く。隔離状態での復活は『11巻』の玲奈(れな)に似ている。何巻分も落ち込んでいた どこかの黒崎さんと違って女性は気持ちの立て直しが早い(罪の重さも違うけど)。

施設内を捜索する照はアキラと遭遇。「Mの遺言」は緑川(みどりかわ)教授のメッセージだと勘違いしているアキラは暗号を突破し自らの死に近づく。それを必死で止めようとする照だったがアキラは自暴自棄になっており照を置いて先に進んでしまう。


キラを助けたいのか自分の心も分からないまま照は自分に出来ることをするために施設で手掛かりを調査を始め、飾られた写真の裏にSDカードを発見する。

やがて黒崎たちが島に上陸。使用したヘリは1時間弱の距離にあるヘリポートにて待機となる。黒崎が先行した直後、マスターが襲撃される。チーム内最強の戦闘力が弱点を突かれたこともあって本来の力を発揮しない。
黒崎は照を発見し合流する。濃厚接触で無事を確かめ合う2人だったが謎のカウントダウンが始まった状況では ゆっくりすることが出来ない。

マスターを襲ったのはチハル。彼はマスターに毒を仕込んだナイフでケガを負わせ、中和剤と引き換えに自分の安全を確保しようとする。チハルがわざわざ ここにいるのは彼女の裏の役割「説明おばさん」を完遂させるため。聞かれてもないのに現状をベラベラと説明してくれる。黒崎たちが知り得ない情報を わざと流すことで危機的状況を演出するためにチハルがいる。

チハルがマスターを最初に襲ったのは抵抗するであろうアキラを運搬できる人間を潰すため。タイムリミットが来れば爆発する島にアキラを足止めできれば それでいい。チハルはアキラの完全消去を願う組織の人間。だがアントラは違うという。アントラに関しては説明しないままチハルは去る。

自分は勝ったと言いながら死にゆく人にベラベラと説明するのは負けフラグ

さに絶体絶命のピンチだが、照の捜索の成果であるSDカードのデータを解析すれば爆破の回避になる可能性があった。SDカード内のデータを黒崎が解析するのが早いか、アキラが島内の最深部に到着するのが早いかの勝負が始まる。

アキラの行動を遅らせる役目を照が担う。それは全員生存への最適な方法。断じてヒロイン性などではない。そういう冷静な判断が照には出来る。土壇場に強いところは何回も描かれてきた。

「超演算能力」を持つアキラに暗号は ほぼ無意味。けれどアキラは非人道的な研究の副作用で脳に病を抱えていた。そんなアキラの苦痛すら その能力を支配しようとする者は隷属の手段にしてしまう。拾われた組織にも人権を奪われたアキラにアントラは近づき、アキラの能力を使い組織の内部崩壊を企む。アキラに偽の「Mの遺言」の情報を吹き込むことで彼を動かす。


ータ解析で分かったのは爆発を止める手段がないということ。爆発=アキラの死が計画の官僚の合図にしていた。それが分かった黒崎は照を追う。それが命をかけて最善を尽くすということだから。

2回目の照の説得もアキラには届かない。偽善か そうでないかの違いで周囲の人間は自分を利用しているだけだとアキラは絶望していた。届くのは緑川教授の言葉だけ。それを突破の糸口にして照はアキラの絶望を壊すという思いの強さだけで彼を制圧して倒れる。遅れて到着した黒崎も倒れた照を見ても これまでのように興奮して暴力を振るわない。混乱するアキラをなだめる。2人ともアキラの「これから」を考えてくれている。