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『大地の子』と私 (文春文庫)

『大地の子』と私 (文春文庫)

胡耀邦総書記との中南海での異例の会見。労働改造所、未開放地区への初めての取材。「三度も捨てないで!」と叫ぶ戦争孤児たちとの面談…。情報閉鎖国家の中国で、作者はどのようにして小説『大地の子』を発想し、執筆する道を切りひらき、完結させるに至ったか。二十世紀の日本と日本人の良心を問う物語のすべて。


作家とはかくあるものか。作家という職業を肩書きに持つ「作家馬鹿(本人談)」の凄まじい根性に恐れ入りました。1つの小説を書くために8年という歳月をかけ、100冊以上の関係資料を読み、誰も足を踏み入れることのなかった地に自ら足を運ぶ。日本人だけでなく『人類に大きな意義を持つ』小説「大地の子」の完成が胡耀邦総書記(当時)との面会と多大な協力と、人々の山崎さんへの言葉、そして何より山崎さんの努力によるものだと改めて知ることが出来た。
大地の子」の圧倒的なディティールは、書かれている場所をその足で巡って来たからこそのものであった。中でも、胡耀邦総書記(当時)との会見場所が中国の中枢部である「中南海」で、そこに作者が足を踏み入れていたのには驚いた。その会見での山崎さんの見解は、政治家や中国担当外務官のそれのようである。胡耀邦総書記も、山崎さんという深い見識と発言力を持つ人に打たれ、協力を惜しまなかったのだろう。 また小説完成後も、「大地の子」の印税と「不毛地帯」などの著作権を売ってまでも、戦争孤児の子女に奨学金を出す財団を設立した山崎豊子という人間の素晴らしさに感動した。人のために私財を投げうって尽力することは普通の人には出来ない。「大地の子」の根底には人間愛が描かれているが、山崎さんの根底に流れるのも愛なのだろう。世界の痛みを自分の痛みとして感じられる、その感性で書かれたものだから多くの人を感動させるのだろう。
年代も掲載雑誌もバラバラの取材日記や対談をそのまま一冊にまとめたものであるから、「あとがき」で山崎さんが書かれている通り、重複部分がかなり多い。が、どの文章でも対談でも変わらぬ事・同じ事を訴えている所からも山崎さんの一本筋の通った生き方が見えるような気がしました。この作品にとって胡耀邦さんがどれだけ重要な存在であったか、そして山崎さんにとって戦争体験は人生においてどれだけ悲しく忘れられないものであったかが分かった。

大地の子』と私『だいちのこ』とわたし   読了日:2006年08月02日