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工学部・水柿助教授の逡巡 (幻冬舎文庫)

工学部・水柿助教授の逡巡 (幻冬舎文庫)

水柿君は、N大学工学部助教授のままミステリィ作家になった。なんとなく小説を書き始めたら、すぐに書き上がり、それをミステリィ好きの妻・須摩子さんに見せたが、評価は芳しくなかった。しかし出版社に送ってみたら、なんと本になって、その上、売れた!時間があれば小説を書き続け、幾星霜、いまではすっかり小説家らしくなったが…。


面白かった。いや、内容もさることながら蛇足が。蛇足も内容の一部か…?
と、まぁ不思議なシリーズである。内容はあるんだけど確固たる内容はないようだ(書かなきゃよかった…(真似))感想としては作家になる経緯とか、なってからの話は結構知っている事が多かったので、その点では前作の方が知らないことばっかりで楽しめたかな。けれど、それ以外はこっちの方が有利な点がある。その最大の理由は、読者がこのシリーズの特性を私が知っていること。これは「こういう」シリーズなのだとの前知識が備わっていた心の余裕が、楽しさを生み出す。しかし、この本、軽い気持ちで読もうとすると足元をすくわれる。実は意外に読むのに時間と労力を必要とする本である。なぜなら普通の小説やエッセイ、特にミステリならば構成に秩序があるので書いてある内容をある程度予測できる。しかし、この本ときたら1ページ先も予測できない。カオス状態。ちょっと読み飛ばすと、ついていけない。途中乗車も下車も出来ないノンストップの作品なのだ。
ほとんど無知のままミステリ作家になった水柿君のミステリの考察は面白かった。私はミステリについて、あまり不思議に思わず読み進めていったけれど、言われてみれば確かにおかしなジャンルとファンである。そして、ついに水柿君の(下の)名前が作品中でも明らかになりましたね(その前に『臨機応答・変問自在2』の質問の答えとして出ていたけれど。)他にも「ツチケン先生」の名前が登場したり、パペットマペットが登場したり。特に後者には驚いた。水柿君、いつ知ったのであろうか…? これが一番のミステリィかも。こういった小ネタが満載されている。蛇の足がムカデの足のように何本もあるのがこの作品なのだ(想像したら気持ち悪い…)さて水柿君、お金持ちになった。ラストはどうなるんだろう…?

工学部・水柿助教授の逡巡こうがくぶ・みずかきじょきょうじゅのしゅんじゅん   読了日:2005年11月20日