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封印再度 (講談社文庫)

封印再度 (講談社文庫)

50年前、日本画家・香山風采(ふうさい)は息子・林水(りんすい)に家宝「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣」を残して密室の中で謎の死をとげた。不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、現在にいたるまで誰にも解かれていない。そして今度は、林水が死体となって発見された。2つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。


S&Mシリーズの前半戦クライマックス。今回は犀川と萌絵の関係が少し変わっていきます。物語自体は不思議な感じ。昭和っぽい臭いというか、「和」独特の怖さがあります。どことなく京極夏彦さんを連想させるのは、作中の「天地の瓢」と「無我の匣」の漢字から与えられる効果でしょうか。しかしまたサブタイトルが良い。「封印再度」=「WHO INSIDE」。密室の謎ともリンクして物語を盛り上げていると思います。恩田陸さんの「三月は深き紅の淵を」でタイトルはその小説の4割を占めるという言葉がありますが、それがぴったしくると思いました。よい小説はよいタイトルから。森さんの言葉って独特だけれども一般化されやすい、と思います。例えば、「午前七時なんて歴史的な時刻に起床すると、頭は銀河系の恒星群並にばらばらだ」という表現、誰も使ったことないけど、誰にでも容易にイメージできる言葉。こういう言葉のセレクトの仕方は日常から心掛けてないと出来ません。森さんのセンスの鋭敏を感じます。メールの文頭「浜中@犀川研」という表現大好きで、一時期多用していました。浜中さんって容貌が、西澤保彦さん作品の「タック」に似てるのかもって思いました。マシュマロに左手で顔書いたっていう表現が合うと思う。
前置きが長くなりましたが、ミステリ本体としては、『すべF』以来のバリバリの理系小説だと思います。斬新です。それよりもトリックといえば萌絵のですよ。一歩間違えれば『セカチュー』です。犀川先生はもちろん、読んでいるこちら側だってドキドキハラハラ、えぇ〜こんな結末!?って思いますよね? 読み返して気付いたことは、森さんのトリックがもう一つ既に用意されていていたこと。なんて先もよんで駒を配置してるんですね。それについては別の機会に。

封印再度たいとる   読了日:2000年10月30日