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捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

メビウスの帯構造の密室に現れた死体、そして消える秘宝。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣が眠る“メビウスの帯”構造の巨大なオブジェ様の捩れ屋敷。密室状態の建物内部で死体が発見され、宝剣も消えた。そして発見される第2の死体。屋敷に招待されていた保呂草潤平と西之園萌絵が、事件の真相に至る。S&MシリーズとVシリーズがリンクする密室ミステリィ


Vシリーズ8作目。ここで大きな変化球。VシリーズでありながらS&Mシリーズの様相も呈す、まさに表が裏になる「メビウスの帯」のような捩れた構造の作品。S&Mシリーズでいうと8作目は『今はもうない』です。さてさて共通点は…。もう、これはシリーズ全作を読めば自明です。言わずもがなですよね。下に反転してネタバレしてみます。この頃ネタバレ多い…。いかんいかん。
今回のテーマは「密室本」らしく密室。大掛かりな建造物というど派手な密室(密室に地味も派手もないが…)。ただ私には想像力や思考力が足りないのか、この建築物の上手く理解できなかった。ニュアンスは伝わるのだけど、どうして謎なのかがいまいち把握できず。もやもやのまま解決が早く訪れたので(本が薄いのだ)謎の方は消化不良というか食べた感じがしない。他のサイトの皆さんも建造物をいまいち想像しきれていないみたいで安心、そして日本人の空間把握(想像)能力の欠如を心配する。森さんの文章が悪いのかもしれない、と責任を押し付けてみる。しかし密室よりも重要なのは西之園萌絵と保呂草さんの共演だろう。保呂草さんかなり悪印象。またまた登場のエンジェル・マヌーバに目が眩む?という展開。密室本でありながら、密室の謎よりも推理とその裏をかく行動が面白かった。なるほど、このシリーズは殺人や密室といったミステリに保呂草さんの手練手管というスパイスが効いているのか。一つの事件の裏でこそこそ動いている人の行動が、疑いの目を潜り抜けながら成功するのが快感なのだ。気づくの遅いですね…。VシリーズながらS&Mシリーズの楽しさを満喫しました。国枝さんの登場に胸躍らせた私でありました。練無くんがいない分の穴埋め効果十分。
※本書の真相以外にも言及してるので本書までの森博嗣作品を未読の方は見ない方が賢明です。
(ネタバレ:反転→)作品の8作目は時間軸が捩れている。S&Mシリーズの「今はもうない」が過去の話なのと同じく、この本はVシリーズの時間を基準とすれば未来の話である。そう気づいてみれば最初から言葉には微妙なニュアンスが含まれている。なぜ、あんなにも紅子と萌絵を比較するのか。練無くんたちが登場しない理由、エンジェル・マヌーバがここにある理由、国枝が萌絵に同伴し、犀川が電話のみの理由などが分かる。そして、この時間差が重大な事実を…。(←)

捩れ屋敷の利鈍ねじれやしきのりどん   読了日:2002年01月13日