- 作者: 村山由佳,志田光郷
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/06/17
- メディア: 文庫
- クリック: 10回
- この商品を含むブログ (66件) を見る
一人で部屋を借りさえすればいつだって好きなときに彼女と二人きりになれるとばかり思っていた…。なのに、思うようにはいかない勝利の一人暮らし。バイト先の「風見鶏」では失敗を重ねるし、勝利への思いを断ち切れずに苦しむ星野りつ子が気にかかる。何よりかんじんの「かれん」が離れていこうとしている…。波乱含みのシリーズ7弾には星野りつ子の独白を収録。
今回は坂を転げ落ちる勝利の巻。前巻を丸々使って描いた勝利とかれん二人の気持ちのすれ違い。それが今回、かれんの言葉によって決定的に表れる。これまでの些細な気持ちの行き違いが丁寧に細かく描かれているので、かれんの勝利の独走を指摘した言葉には、ハッとさせられた。しかし1年以上、読者を待たせてこれしか進まないというのはどうだろう…。ここ2冊分の内容を1冊で表現して欲しい。もしくは今回はすれ違ったまま終わっても良かったのに。この刊行ペースと内容の薄さ(つかず離れずの繰り返し)が展開の弛みになっている。二人の関係を温かく見守るはずが、ジリジリ焦れてしまう。また読者に前巻の内容を思い出させるためか、最初の数十ページはやたら説明が多いのも気になる。
「あとがき」は恒例の自分語り。ここまで語られると作中で勝利が気づいた事になっている恋愛の難しさや人生の教訓も全部、作者の(説教臭い)言葉に思えてきてしまう。あんなに直接的に書かなくても読者に考えさせるのが小説なんじゃ…。あと勝利の大学生ライフ、昭和っぽい。あぁ、文句ばっかり。
- 「WAIT FOR ME」…あらすじ参照。「互いに成長する恋愛」を目指していたはずなのに、いつの間にか自分勝手に生きていた勝利。相手の事を誰よりも大事に思っているのは間違いないが…。ここに来て初めてかれんの強さ、というか内面が垣間見られた。今回は勝利とかれんの精神的な成長が見られたが、肉体的な接近や星野りつ子の身体の事は、同じ内容を延々と読まされている気分になる。これが良く言えばスローラブって事なんだろうが、反対に悪くも言える。
- 「CALLING YOU」…番外編。星野りつ子の独白。なんで去年の年末まで時間が逆戻りするの?と思ったものの、結果が出てるからこそ悲しい話だった。恋の甘さの逆の一面。苦く苦しい。冒頭の一文がなかなか素敵だった。