- 作者: 村山由佳,志田光郷
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/06/18
- メディア: 文庫
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (57件) を見る
花村の叔母夫婦がついにロンドンから戻ってくる。勝利はかれんとふたりだけになれる場所を確保するために、周囲を説得して、ひとり暮らしを決意する。男としての強さ、優しさに、磨きをかけるためにも。なのにかれんは近いようで遠くて。ふたりの甘く切ない恋の行方が、ますます気になる人気シリーズ第6弾。かれんの実兄「風見鶏」のマスターのエピソードも収録。
シリーズ第6弾。一人暮らしを始めて成長し少しでも自立しようとする勝利、気になるかれんの将来ビジョン。だが、勝利は自分の世界の出来事に精一杯で、かれんも勝利に全てを曝け出せていない。「遠い背中」、題名からして暗示的だ。今後の彼らの行方が気になる…。が、この巻だけでは話が全然進んでない。もうちょっと濃度を上げてくれないか、村山さん。主要登場人物の誰か一人ずつでも(星野りつ子とか)決着を付けてくれないと1冊読んでも満足感は得られない。背表紙のあらすじを読む以上の物語の展開、感情の揺れを与えて欲しい。
毎回1回ずつ挿入される濡れ場(というには語弊があるが)。シリーズの「お決まり」のようになっているが、何回も同じ描写を読まされている気がするのだが…。かれんのカマトトっぷりは巻を追う毎にパワーアップし、私のかれん評価は巻を追う毎にランクダウンしている…。かれんの良さが私には全く分からない。
今回も前回でも触れた「あとがき」の話を。「あとがき」を読む度に、あぁ村山由佳という人は自分の事が、自分の小説が、自分の思考が大好きなんだなと思わせられる。そして直談判して履修しなかった必修科目の「数ⅡA」の話。彼女の強い意思は認めるけど、これって「必修逃れ」なんじゃないのか…?
- 「HONESTY」…あらすじ参照。勝利は無自覚だろうが彼の焦り、視野の狭さが痛々しい。成長しようとするが故の行動なのがまた読者をハラハラさせる。今回のMVPは丈。彼の優しさ・寂しさに胸を打たれる。が、その姉かれんの優柔不断な態度に怒りを覚える。庇護欲を誘うのは分かるけど、精神的にも肉体的にも勝利を生殺しにするのは止めてあげて欲しい。なんだかお互い不幸な関係だなぁ…。
- 「WHAT A WONDERFUL WORLD」…番外編。マスター視点の物語ではあるもののマスターの内面が窺い知れる訳ではなかった。両親を亡くした日の克明な記憶と、かれんへの愛情の話。もっと彼の思考・感情が知りたかったなぁ…。