- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/07/13
- メディア: 文庫
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中学生の双子の兄弟が住む家に落っこちてきたのは、なんとプロの泥棒だった。そして、一緒に暮らし始めた3人。まるで父子のような(!?)家庭生活がスタートする。次々と起こる7つの事件に、ユーモアあふれる3人の会話。宮部みゆきがお贈りする、C・ライス『スイート・ホーム殺人事件』にも匹敵する大傑作!
面白かった! 確かにミステリ的には宮部さんご自身も仰っているように「ライト」な作品である。もちろん毎回、事件は起こるし、ミステリ的解決もある。どの短編も、ちゃんとレベルは高いのだけれど、それよりも奇妙な関係・会話の面白さが一番楽しめる。こっちに比べれば、ミステリの比重は非常に「ライト」なのである。それぞれの行動や会話に表れる微妙な感情の推移が温かい感情を呼び起こす。双子の息子の父という状況にどんどん溶け込んでいく「俺」、それを否定する「俺」。あぁ楽しいー! シリーズ化が予告されながら、現在(2005年)まで出ていません。是非読みたい! しかしこの双子、中学生の、しかも男の双子にしては素直すぎるし、少し幼くない…?まぁ、親がグレるほどの良い子ということで納得しましょう。
- 「ステップファザー・ステップ」…あらすじ参照。遺棄児童と疑似家族の契約を無事(?)結び、家族協力し再び侵入した隣家には奇妙な点が幾つもあった…。ありえない設定だけど楽しくてしょうがない第1話。双子のキャラクタだけで◎。
- 「トラブル・トラベラー」…旅先で置き引きにあった双子を迎えに行った土地で、更に事件に巻き込まれる…。事件は単純なものだけど、やっぱりキャラクタがいい。手紙の書き方、喋り方、そしてお父さんという呼び方。萌える…?
- 「ワンナイト・スタンド」…近所の正当な誤解を解くために中学校の授業参観に出席する事になった泥棒が一人。その裏で謀られたある計画…。爆笑!現実では無理があるけれど、そこは笑って済まそう。この展開だけで面白い一編。
- 「ヘルター・スケルター」…直が盲腸で入院している頃、ある話を聞いた「俺」は一つの疑惑にさいなまれていた…。最終話にもなりそうな話。そう言われるとそう思ってしまい背筋が凍った。結末も予想できるけどね…。また一歩近づく「家族」。
- 「ロンリー・ハート」…文通相手に明け透けに家庭事情を書いていた妻が脅迫され、金を要求された。しかし取引現場には死体があって…。人のわがままな心理を描いている所は「西澤保彦」さんみたいだ。事件発覚は、かなり偶然だけれど。
- 「ハンド・クーラー」…双子の友達の家の庭に投げ込まれる地方新聞。しかも、その家の父親が原因不明の大怪我をしたという…。いまいちと言わざるを得ない短編。これは、ちょっと遠まわし過ぎやしないかい? いろいろ社会派の話である。
- 「ミルキー・ウエイ」…双子の家に本物の父親が帰ってきた!? そう思い落ち込む「俺」が知ったのは双子それぞれの誘拐事件だった…。真相は両親の離婚の駆け引きかと思いましたが違いました。オールスターキャストの最終話です。