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鴨川ホルモー (角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目ぼれ。葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚。腹を空かせた新入生、文句に誘われノコノコと、出向いた先で見たものは、世にも華麗な女(鼻)でした。このごろ都にはやるもの、協定、合戦、片思い。祇園祭宵山に、待ち構えるは、いざ「ホルモー」。「ホルモン」ではない、是れ「ホルモー」。戦いのときは訪れて、大路小路にときの声。恋に、戦に、チョンマゲに、若者たちは闊歩して、魑魅魍魎は跋扈する。京都の街に巻き起こる、疾風怒涛の狂乱絵巻。都大路に鳴り響く、伝説誕生のファンファーレ。前代未聞の娯楽大作、碁盤の目をした夢芝居。「鴨川ホルモー」ここにあり!! 第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。


「はじめに」から、「ホルモー」と呼ばれる競技の大まかな説明で始まる。ただし大まか過ぎて、かえって「ホルモー」の実体は掴めない。題名からして「ホルモー」が物語の中心にくる事は推測できるが、一向に「ホルモー」の姿は霧の中。五里霧中のまま読み進めていたら、気がつけば中盤。得体の知れない競技に怖々ながらも、のめり込む主人公たちと同じく「鴨川ホルモー」に夢中になっていた。
小説の構成として起承転結がしっかり区切られているので読みやすい。まず主人公たちが訳の分からないまま京大青竜会、そして「ホルモー」に引きずり込まれる「起」。「ホルモー」がなんたるかが少しずつ解明され、初めての実戦に臨む「承」。ある出来事から主人公が独自の行動をするため従来の「ホルモー」とは様相が違ってくる「転」。そして最後にあの日の上級生たちの全ての行動に説明がなされる「結」。「起」点は唐突で少々読み辛さを感じるけれど、設定を「承」諾してからは「転」んでもただでは起きない主人公の破天荒な行動に目が離せなくなった。全体としては「結」構、面白かった作品(>偉そうに)。
ただ、いまいち突き抜ける物が無かったという不足感もある。最大の原因は主人公の安倍くん。彼にはちっとも感情移入出来なかった。2浪して入学した「まさし」好きの割に子供っぽく成熟していないし…。彼が独自の行動を取る「転」の部分から物語が加速度的に面白くなるのも事実だけど、その理由が自己中心的過ぎて彼こそサークル、果ては「ホルモー」の輪を壊す疫病神にしか思えなかった(青春っぽい理由だけど…)。馬の合わない仇敵・芦屋も、その矮小さが描かれてないから芦屋への嫌悪感もただの逆恨みにしか映らないし、憧れの君である早良京子も鼻の形以外の美点は見受けられなかった。登場人物の書き分けや魅力は乏しい作品。登場人物の書き分けが最少人数しかされてないので、物語の中心に据えられたはずの「ホルモー」も団体戦の割にはチームワークを感じさせるような描写は少なかった。せめて三好兄弟の個性ぐらい出してあげれば良いのに…。
千年の歴史を誇る競技「ホルモー」だけど、私は最近のゲーム「三國無双」を連想。更には他の方のブログに「ピクミン」とあって、ドンピシャな連想で膝を打つ。作者の発想力に感服するより三国志とか戦国時代のゲーム(KOEI系)が好きなのかな、と思った。全体としては結構、面白かったんですが…(>再び偉そうに)。

鴨川ホルモーかもがわホルモー   読了日:2007年06月09日