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真夜中の五分前―five minutes to tomorrow〈side‐A〉 (新潮文庫)

真夜中の五分前―five minutes to tomorrow〈side‐A〉 (新潮文庫)

小さな広告代理店に勤める僕は、大学生の頃に恋人・水穂を交通事故で失い、以来きちんとした恋愛が出来ないでいる。死んだ彼女は、常に時計を五分遅らせる癖があり、それに慣れていた僕は、今もなんとなく五分遅れの時計を使っていた。最近別れた彼女から、「あなたは五分ぶん狂っている」と言われたように、僕は社会や他人と、少しだけずれて生きているようだ。そんな折り、一卵性双生児の片割れ「かすみ」と出会う。「かすみ」と「ゆかり」は、子供の頃、親を騙すためによく入れ替わって遊んでいた。しかし、それを続けるうち、互いに互いの区別がつかなくなってしまったという。かすみは、双子であるが故の悩みと失恋の痛手を抱えてていることを、僕に打ち明ける。そんな「かすみ」を支えているうち、お互いの欠落した穴を埋めあうように、僕とかすみは次第に親密になっていく。


普通の恋愛小説だ。題名などから察するにSF純愛モノなのかと勝手に思っていました。5分遅れた世界が何かとても大きな効果を出すのだとばかり思ってましたが、違いました。基本は恋愛小説です。まぁある意味、双子のSFなんですが(特にside-Bは)。このside-Aは前フリみたいなものです。長ーい前フリ。そうなるんだろうな、と予測されるところに物語は進んでいきます。後半はちょっと意外な展開もあるけれど。ただね…。私が思うに、いくら遺伝子が同じ双子であってもこんな事は無い、と私は思うわけです。顔も少しずつ違います。ただ髪型で判断するけど。ちょっとした違いが最大の違いなのです。おっと、話が逸れましたね。
本を2冊に分けた事には賛成。分けないと時間の経過をサッと読み進められてしまう恐れがある。実際にはside-Bを読むまでの時間がたとえ5分だけでも、物語に一区切り打てる。その5分間に馳せる思いが大事なのだと思おう。
本多さんは村上春樹によく似ていると言われますが、今まで私はそこまで意識しなかった(私が村上春樹の本を今まで3冊しか読んでいないから村上要素というモノがよく分からないという理由もある)。ミステリとして読んでいたし、彼の物語は彼のものだった。だけど、今回ばかりは春樹チルドレンと呼ばれる理由もよく分かった。この作品は私が読んだ3冊を想起させるに十分だった。特にside-Bの展開で思ったのは『ノルウェイの森』。これは、ねぇ…。そして『国境の南、太陽の西』。こっちはプールとバーという場所がリンクしたのだと思うけれど…。
一体、お洒落な会話・文章とはなんだろう?本多さんの文章は無理矢理にでも比喩を使おうとしてるような気がする。段落の最後の文章が余計に思うことしばしば。立ち止まってしまう。そこが残念。さらに評価の厳しいside-Bに続く。

真夜中の五分前 side-Aまよなかのごふんまえ   読了日:2005年09月30日