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FINE DAYS (祥伝社文庫)

FINE DAYS (祥伝社文庫)

余命いくばくもない父から、35年前に別れた元恋人を探すように頼まれた僕。別れたときには知らなかったが、彼女は父の子供を身ごもっていたという。複雑な気持ちで当時彼女が住んでいたアパートを訪ねた僕を待っていたのは、若き日の父と恋人だった…(「イエスタデイズ」より)。夢と現実のはざまを行き来するような読み心地で、心の深い場所に余韻を残す4編を収録。新世代の圧倒的共感を呼んだ、著者初の恋愛小説集。


作風がミステリからファンタジィに移行したのかと思うような作品集。青春小説・恋愛小説・家族小説で(広義の)ミステリ、贅沢な作品集なのに物足りない。それでもアベレージはすごく高い。ただ、寡作の本多さんに対する期待値が大きいので、それとの落差が残念。本多孝好のさりげない嘘をさりげなく見抜くのが好きな者としては、嘘か真か分からない世界での解決はちょっと不満。今回は女性が主人公だったり、と今までにないことも。暗中模索とも言えるかも。まぁ同じ作風でずっと書き続けるってのも、作者・読者双方とも飽きますが。表紙がまた良い。

  • 「FINE DAYS」…教師が屋上から飛び降りて死んだ。そこには、言い寄る男を不幸にするという転向してきた美少女がいたと言う話が…なんだか聞いたことあるような。主人公くんのシニカルさが以前より弱いかな。高校生だから?幽霊はいらなかったな・・『MOMENT』と同じく噂を上手に使った作品。ゴシップは真実よりも速く。
  • 「イエスタデイズ」…家出した息子に一年ぶりの連絡。癌により余命いくばくもない父の願いは、昔の恋人と、存在を知らぬまま別れた子供を探し出すこと。そして訪れたアパートの部屋には…。この短編は8点。ただし発想が『MOMENT』を連想させる点もあるけれど。父と子、因果の結果である自分と、若き日の父親と同性・同年代として思い通りに生きてほしいと思う2つの気持ちに切なくなりました。
  • 「眠りのための暖かな場所」…大学院生の私は、教授からゼミで孤立している男の話を聞く。彼の頑なな鉄壁の防御。彼にまつわる様々な話。いったい何が真実なのか…。これも8点。怖いもの見たさの作品。ただこの続きが知りたいんだよ。盛り上げるだけ盛り上げといてさ…。どこかで続編が読みたいな。
  • 「シェード」…アンティークショップに売られていた、ガラスのランプシェード。しかし、それは既に買われていて…。店長が語る、シェードにまつわる話。これは恋愛小説です。結末は予想がつきますが、それでもいい話。老婆の語りの上手さが伝わってきます。何かに迷っている時、この店に行ってみたい。

FINE DAYS   読了日:2003年11月28日