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もうおうちへかえりましょう (小学館文庫)

もうおうちへかえりましょう (小学館文庫)

 

なりたいものは「素敵なひと」、だけど読むのは「月刊連続殺人鬼」。憧れは互いに高めあう恋愛、だけどするのは「さかのぼり嫉妬」。破壊的「ダメ人間」ぶりの告白が話題を呼んだ『世界音痴』に続く、気鋭の歌人穂村弘の第2エッセイ集です。 今回は恋愛や生活をめぐる情けなくも恐ろしいエッセイや、本や読書にまつわるさまざまなエピソードに加えて、バブル崩壊後の「バブル世代」と若者たちの対比、時代精神と表現の関係などをめぐる考察を収録、「史上最もダメな世代」の代表として、自分たちの心情を赤裸々に告白します。高度成長期に生まれてバブル時代に青春を送った「甘やかされゼネレーション」の中年たちは、このデフレ時代をどう生きるのか?


大好きな「ほむほむ」こと穂村弘さんのエッセイ第2弾。前作『世界音痴』が穂村さんの自己紹介的な内容だったのに比べ、この本では穂村さんの個人・恋愛体験に加えて、「世代」や「時代」体験のエッセイといった感じになっている。穂村さんが青春を送った時代と、その前、そしてその後の、時代の比較考証がされている。その後の時代を生きる者としては、穂村さん世代による社会の捉え方と、その考察が面白かった。私がとても感心したのは「戦後」という考え方。現代ではある一定以上の年齢の人以外には「戦」の前も中も後も無い。「戦後」という言葉は、その効力を失っている。もう「戦」を基点に考える時代ではないのかもしれない。そして、その時代では個人の自意識が拡大の一途をたどり、物・恋愛において、誰もがイメージに踊る時代になっている。「戦」のない安心した社会ではあるが、イメージ通りにいかない自分の生活に不安を感じているのかもしれない。


本書は大きく分けて3部構成になっていて、最後の「Ⅲ」は「本の雑誌」での連載である。いや〜、本好きの人の心って似てますよね。本好きの心を表した喜国雅彦さんの「本棚探偵の冒険」とのシンクロ率が非常に高いです。本の並べ方の話や、新しい古本屋への期待感には私も大いに共感する所。また、その中の「文体のこと」は特に面白かった。文体から「小太り」な印象を受けると言われた穂村さん。私は最初から標準体型の人だと知っていたので、そうは思いませんが、私の穂村さんの文体からの印象は、率直さと明快さ、そして何より若さである。考えの深さは若いものではないけれども、文体からだけならば、もっと若い印象を受ける。エッセイを読んでいて穂村さんの年齢を改めて思うと、いつも驚く。

もうおうちへかえりましょう   読了日:2006年03月12日