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本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)

本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)

最高にヘンで笑える恋愛&人生考察エッセイ。今はまだ人生のリハーサルだ。本番じゃない。そう思うことで、私は「今」のみじめさに耐えていた。これはほんの下書きなんだ。いつか本番が始まる。そうしたら物凄い鮮やかな色を塗ってやる。塗って塗って塗りまくる。でも、本番っていつ始まるんだ?43歳・歌人の真剣エッセイ。


  っつ、妻って!!!!!!!
いや、情報としては以前から知っていたんですけど、穂村さんのエッセイの中に「妻」という文字があることに、くらくらする(笑) この前のエッセイ『現実入門』は、ノンフィクションだったのか。「運命の人」に振られちゃったなぁ(笑) 失恋してしまった私にとってはこの本は「本当はどうなんだ?日記」から「本当にそうなんだ!日記」になりました。
私は穂村さんのエッセイを、本当にゆっくり読む。そうして穂村弘の文章を読んでいるという幸福感をじっくり味わう。だけど穂村さんの文章は同時に泣きたくもなる。穂村さんの世界の、穂村さんのフィルタを通した世界の、その美しさ、また逆の「生き苦しさ」に涙が出そうなのだ。美しさでいえば、「タクシー乗り場にて」や、「それ以来、白い杖を持ったひとをみつめてしまう」などの回。穂村さんはダメ人間だけど、心優しきダメ人間なのだ。そして「硝子人間の頃」は本気で泣きそうだった。エッセイというよりも一つの物語としてジーンと胸に沁みいる。穂村弘の危うい雰囲気の一因を知ったような気がした。それが魅力的なんだけど。
一つ目のエッセイエスプレッソ」から「あとがき」までの全体として一貫した流れが好き。エスプレッソ」から穂村弘らしさが爆発していて、ファンとしては嬉しさ爆発。そして「あとがき」での本番人生の始まり。新・穂村弘への祝福と期待で胸がいっぱいだ。タイトルでは「結果的ハチミツパン」が大好き。今後、私は日記で「結果的〜」というタイトルを付けるでしょう。パクる自信があります。そして「ロマン文庫の皮剥き」も良い。本の皮剥きとは面白い表現だなぁ。夜中に本の皮剥いてる人って、「くらくら」というより怖い…。もう妖怪の類だ(笑)
私は深読みしているけれど、もちろん基本は、カラッと笑えるエッセイで「焼き鳥との戦い」の「そうなの、これ、固いの。ばらばらに、なんないの。」にはお腹を抱えて笑った。かわい過ぎる。今後、新・穂村弘が塗る色彩も楽しみにしています。

本当はちがうんだ日記ほんとうはちがうんだにっき   読了日:2006年06月05日