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手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。


たった二人きりの家族であった兄の起こした強盗殺人。犯罪は誰を苦しめるのか、ということを書いた良作だと思います。犯罪は「被害者」と「加害者」の両者しか存在しないが、その後、犯罪はその両者の関係者にまとわりつく。「被害者」側には悲しみと憤り、「加害者」側には犯罪者の関係者という視線を、レッテルをはられる苦しみ。いつまでも残るレッテルに弟の出した「答え」は…。
ある人の人生を描くという意味では 『白夜行』に似た雰囲気。ただ『白夜行』と違いこちらの主人公はまっとうに生きようとしている。しかし、そこにたびたび届く兄からの「手紙」といつまでも払拭できない犯罪者の弟という立場。
『青の炎』の冒頭で「犯罪を起こす者には想像力が足りないんだよ」というセリフが主人公の口から発せられるのですが、想像力を働かせられないのなら、この本を読んでみるのがいいでしょう。自分の今、大事な人たちが自分のせいで一生苦しみ続ける運命にさいなまれるという事と、罪を犯すという事を秤にかけることができると思います。 何度も苦しみながら主人公が取った「決断」は正しいのかどうか私には分かりません。ただ「決断」をくだして生きるということは、正誤よりも大事なことだ、ということは私にも分かりました。

手紙てがみ   読了日:2003年11月12日