- 作者: 東野圭吾,杉田比呂美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/11/14
- メディア: 単行本
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今年もイヴが近づき、恒例のサンタクロースの集会が開かれる。新しく加わった女性サンタを認めるかどうかで会は大騒ぎになるが…。おかしくて、ちょっぴり切ないクリスマス・ストーリー。
『片想い』の作中で登場したお芝居の台本が元になっている絵本。絵本といっても漢字にルビがついていないので、子供向けではなくて大人の絵本といった感じ。一見するとサンタ界のドタバタ劇で最後に甘いおまけがついている感じなのですが、さすが『片想い』の中に出てくるだけあって内包されている問題は考えさせられるものでした。固定観念や共通観念というのは恐ろしいものです。私もサンタは男性だと思うし、白人だと思っている。そして、それを簡単に塗り替えることは難しい。これは、そのまま差別や偏見にも置き換えられて、男性は一生男性のままである、と思い込んでしまっている。固定観念を深く掘り下げると実は根拠の無いものだったりする事は多々ある。そこから派生する差別や偏見が無ければもっと世の中はスムーズにいく。分かっているけれど難しいのも現実。固定された物は動かしづらいものです。人の中で固定される事が少しずつ変わっていけばいいのですが。
最後の数ページはクリスマスの奇跡としては好ましいのですが、シングルマザーとしてサンタに立候補した彼女には必要ないのでは?と思ってしまいます。最後の絵なんて思わずにやけてしまうのですが、母性と父性を背負って生きる女性サンタのままでも良かったんじゃないですかね。幸せに水を差すつもりはありませんが。