- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/08/04
- メディア: 文庫
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十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。
個人的には『白夜行』よりも好きな作品。主人公はじめ登場人物は30代なのに、青春小説のような雰囲気がかもし出されているからだろうか?とにかく集中して読んだ作品。新しいものの見方を与えてくれた一冊。
この本の主題として置かれているのは性同一性障害。性同一性障害を意識した人の話。決して偏見とか面白半分ではなく性同一性障害を主題に置きながら、性別やジェンダーのことをきちんと語っている作品です。「男である」とかその逆であろう「女である」という自分本来の性別からずれているのが性同一性障害と思われがちだが、男の人が完璧に女性に、女の人が完璧に男性になろうとするのが性同一性障害ではない、といっている所が私は好きです。分類してどちらか一方のモノしか認めない、というのではなく作中に出てきた「メビウスの輪」のように1つに繋がったもののどこにいるか、ということが大事なのである、と言っているところ。男でありながら女性、女でありながら男性、そういう人はいて当たり前なのである。読み終わった後「片想い」というタイトルが胸にジーンとしみて鈍痛を引き起こします。