《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

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永遠の中を 彷徨っているよ 『冬のはなし』

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小畑 友紀(おばた ゆうき)
僕等がいた(ぼくらがいた)
第05巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

矢野の本当の気持ちを探しながらも、彼の中には亡くなった元彼女・奈々がいることを痛感し、別れを告げた七美。短いけれど楽しい思い出も、忘れられない言葉もすべては過去のものに…。そんな、ひたむきな恋愛をしてきた七美を思う竹内だが、矢野との間にある親友という“壁”を越える時がきて…!?

簡潔完結感想文

  • 捨てられた矢野と捨てられた犬。親友が彼女と別れたのならば俺が拾っても問題はない。
  • 2度目の夏祭りでも遭遇する七美と竹内。新しい恋が前の恋を過去にするのかもしない。
  • 好きな人に好きだと言ってもらった日から1年経った文化祭の夜。今年は何が起きるのか?

女漫画って恋が上手くいってない時こそ面白いよね、の5巻。

『4巻』のラストで別れてしまった七美(ななみ)と矢野(やの)。

付き合っていた時は束縛にも似た言葉を七美に連発していた矢野ですが、
別れてからは七美と会話もせず、想いは自分の胸の内に留めている。

やっぱり付き合うと面倒なタイプかもしれませんね、彼。
離れていると眩しく感じて、近くにいると暗く感じる不思議な男。

近くにいない方が美化されてしまうのは、
七美の中の矢野も、矢野の中の元カノ・奈々(なな・故人)も同じかもしれません。


2人が別れることで始まるのが三角関係。

サイコパス風味の矢野の恋愛観に引きずられるよりも、
高校生らしい直球勝負の三角関係の方が明るく、そして下世話な楽しさがあります。

動き出したのは、これまで大人しかった矢野の親友で同級生の竹内(たけうち)。
犬を拾ったことで、七美に対して攻勢に出る。

竹内くんの行動を全面的に紳士と思うか、
傷ついた七美に対して漁夫の利を狙う策士と思うか難しいところですね。

昨年に引き続き、夏祭り会場で出会った場面も怪しいと言えば怪しい。

七美が見ず知らずの男性から金魚を貰う(押し付けられる)場面で登場する竹内。
息を切らした様子もなく、颯爽と現れ、そして男性の甘言を断ち切る竹内。

怪し過ぎる。これは七美に祭の会場で困りごとが出来るまで身を潜めていたのではないか。
もしくは金魚と一緒に高いエサを売りつけるこのサクラの一味を買収していたのではないか。

相手は、エリート大学を卒業してエリート企業で働くエリート候補生だぞ。
それぐらいスマートに行っても不思議ではない。

もしや、拾ってきたという犬も実はペットショップで買ってきた血統書付きなのでは⁉
犬をエサにして、七美を釣ろうというやり方のは金魚すくいの一味と変わらない。

サイコパスの次はストーカー気質の計算高い男が近づいてきたぞ。
七美の受難は続きそうです(ごめん、竹内)

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弱っている七美に近づく割に、強引な手段は取らないジェントル策士の竹内くん。

七美の気持ちはどうなんでしょうか。
竹内という優しい男に好かれることは七美も満更ではないはず。
ただ、好きというよりは「1人は 寂しい」という気持ちの方が大きいのかな。

七美にとっては矢野との恋愛が「過去」になりつつある。
最初の恋愛とどう向き合い、どう別れて、そして次の恋をどうやって始めるのか、
今の七美が抱える悩みは、ずっと矢野が抱えていた悩みに近いものがある。


して、竹内と同じ立ち位置のはずの山本は変わらない。

『4巻』で七美にフラれたという矢野の報告も受け流し、
今度は自分の身体を差し出すこともしない。

彼女にとっても絶好のチャンスだと思うが、
変わったと言えば矢野に対して冷たい態度を取らないところぐらいか。

代わりに矢野と穏やかに話し、同じ過去を持つ良き相談相手になっている節もある。

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交際はせずとも根気よく矢野の心に寄り添い続ける人がいる。

もしかしたら、これは山本さんなりの策なのかもしれませんね。

積極的には動かない。
付かず離れず、彼の人生に伴走することが彼女の喜び。

彼女もまたなかなかの策士にして、精神的に歪んだところがあるかも。
(私の妄想・推測ですが)


して巡ってくる2度目の文化祭。

というか、いつの間にかに2年生に昇級してたんだっけ⁉
と文化祭準備の段階になって流れている季節の速さにビックリした。

どうやら『6巻』の作者のコメントによると、
「『5巻』あたりから まんがの中の季節と掲載される号の季節をあわせるのを やめ」たらしい。
作中の時間に緩急があったのも混乱した原因か。

私はリアルタイムではなく、2020年にまとめて読んだこともあり、
作中の時間の流れが上手く把握できてなかった。

でもクリスマスプレゼントの話 以降、作中が何月なのか分かるような話が無かったような。
やっぱり少女漫画には季節のイベントは大事ですね。
その前に、服装などからちゃんと読み取れという話ですが…。

そして私は全16巻という長さを知った上で読みましたが、
もしリアルタイムで読んでいたら、
七美が矢野との交際をやめたのは一時的なもので、
ここから仲直りして物語はもうすぐ終わるんだろうなぁと予測したでしょうね。

本書が凄いのは(というか七美に対して厳しいのは)、
これが最初の別れであるということ。

この一時的な別離が、この後の安泰の布石ではなく、
更なる試練の予兆だった、ということに現実の中と同じ種類の恐怖を感じる。

楽観的な読者の予想は、一寸先は闇という現実の厳しさの前にかき消されてしまうのだった…。


年の文化祭は矢野から告白され、交際が始まった日。
今年の文化祭はどんなことが待ち受けているのか、というところで幕切れ。

後半1/3は番外編が収録されていることもあり、
『5巻』は駆け足気味の印象があります。

文化祭も準備はしているし、
当日の様子も挿入されているが、
あっという間に夜になってしまった印象です。

これはページの関係以外にも、
登場人物が増えて、それぞれの思惑が交錯していることも
関係しているでしょう。

昨年は、主に七美視点の矢野への想いを描いてるだけで済んでましたからね。
事件としては今年の方が多重的に色々と起こってるんです。


ういえば、矢野が強制参加に近い形で参加した合コンの場面、
矢野にズケズケと質問してくる女性、てっきり重要なキャラかと思ったら違った。

本書はモブと主要キャラの顔面格差が激しい作品なので、
そのハッキリした顔立ちだけで判断したら違ってました。
彼女は ただの可愛いモブのようです。

また、実家が酒屋の竹内くんの家での飲酒はともかく(ダメだけど)、
お店でも(または帰宅後という線もあるが)お酒飲んでんですね、この漫画。
出版された2004年って、そんな感じだったんですかね。
または土地柄?(偏見)


「番外編 Run,baby,run.」…
中学2年生の竹内と矢野のお話。
竹内が恋をしていたのは同じクラスの速見(はやみ)。
近づく学校行事のキャンプで「好きな人とローソクを交換して永遠の恋人にな」るのが夢なのだが…。

本編でも同じ状況になっている矢野との三角関係を描いている。
この巻の最後に持ってくるのは憎い構成ですね。

でも本題は矢野と竹内の友情ですよね。
どんなことがあっても壊れない友情。

果たして竹内は、この中学生時代の苦い経験(奈々も含めて)を踏まえて、
一皮むけた男になるのか、それとも永遠の噛ませ犬になるのか。

未熟なところもあって人や自分を傷つけることがあっても、
結局、一番 理性的な行動をしてしまう竹内の原点が垣間見られます。
噛ませ犬、決定かな…(笑)

中2でなかなか凛々しい竹内くん、
けど高校1年生の初登場時はモブ顔全開だったなぁ。
彼に何があったんだ。

僕等がいた (5) (フラワーコミックス)

僕等がいた (5) (フラワーコミックス)

  • 作者:小畑 友紀
  • 発売日: 2004/04/26
  • メディア: コミック