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僕のなかの壊れていない部分 (光文社文庫)

僕のなかの壊れていない部分 (光文社文庫)

見えるものばかり追いかけてばかりいたら、人はどんなことにでも絶望するしかなくなってしまう。過去のトラウマにより、驚異的な記憶力を持つ、非凡な青年。彼には、才色兼備のスタイリストの恋人と、子持ちのバーのママである愛人、SMプレイ相手の人妻という女性関係があり、さらに家庭教師の元生徒だった少女と、たまに泊まりに来る弟のような青年という疑似家族がある。愛について、生と死について、突き詰めて考えずにいられない彼の内面を通して、作者は「何が一番大切なのか」を問いかける。 デビュー作『一瞬の光』で注目を集め、村上春樹にも比較される異才の最高傑作。書き下ろし。


厄介な作品。日本の現状・愛や生と死という普遍的なテーマを全て内包しようとして、その大きな網目から全て取り逃している気もする。主人公の男に腹が立つ、切り貼りしたような文章、ついていけない行動と展開。全てにおいて、面白くないはずなのに妙に印象に残った作品。本当に、それらの問題に対面する気概があるのなら、参考引用文献を読んだ方が10倍は、情報と思考を獲られると思う。けれど考えるきっかけとして、誰もが目を伏せようとする問題を直視(十分ではないが)する時間を持つという意味では、小説としての役割を果たしていると思う。
社会的地位もお金も容姿も、そして驚異的な記憶力も備わっているが、それ故自分の言葉を持たない男。多分、頭の中の偉人の言葉や本の情報が、彼の思考を阻害するのだろう。だから偉人の言葉を多々持ち出す(好意的解釈)。他の彼の行動は、トラウマ故の行動ってことでしか咀嚼できないけれど。引用は、印象に残ったものが多かった。仏教的な考えの、「自分を愛するように他人を愛する」「人は自分を精一杯生きる事によって、他人を育て生かす」など一つの考えとして、胸にしまっておきたい。特に死に関してのくだりは好き。死から逃げようとすること(作中では櫓を作る事に例えられている)は死に囚われること。死を忘却しようとすることは、死を明確に意識する事。これは宗教を盲信すること、社会的地位を高めようと尽力することの理由として納得。以前、日本の勲章・褒章制度の本を読んだ時にも思った。(無意識にしろ)死からの逃亡でより高い勲章を目指すのだろう、と。
終盤の雷太の行動は、どうでしょう?なんでもありな小説なので、いいのかな…私は↑のあらすじの「村上春樹にも比較される」というのは、なんでもあり、というという点においてだと思える。私にとって現実味の薄かったものが、更に希薄に。白昼夢を見させられてる感じ。夢オチでした、みたいな拍子抜け感がありました。そして序盤のイチローの話は必要なのだろうか?初めて聞いた話だったので、へぇ〜あのイチローがね…なんて思ってたんですが、小説内でわざわざ言うほどのものだろうか?私的には個人を中傷しかねないと思ったんですが。

僕のなかの壊れていない部分ぼくのなかのこわれていないぶぶん   読了日:2003年08月29日