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黄金色の祈り 文春文庫

黄金色の祈り 文春文庫

他人の目を気にし、人をうらやみ、成功することばかり考えている「僕」は、高校卒業後、アメリカの大学に留学するが、いつしか社会から脱落していく。しかし、人生における一発逆転を狙って、ついに小説家デビュー。かつての級友の死を題材に小説を発表するが…作者の実人生を思わせる、青春ミステリ小説。


痛い。読んでいて痛い。その痛みは2つ。まずは普通に主人公の行動が痛い。見てられないほど主観的な考えだけで生きている。が、もう一つは彼の行動を理解できる痛さだ。自分のことを振り返ってみて重なる部分が痛い。果たして自分には彼のような「欺瞞」がなかっただろうか?そう思うことがしばしばあった。その度に何か思い出してはいけない大きな事を思い出しそうな感覚がまとわりついていて、それから逃げるように作品に没頭した。これも逃避だろうか?似てるのかな、彼と。 この作品の主人公の心理は男性特有の心理ではないだろうか?若さによる狭い視界は男女共通だとしても、人生の一発逆転・自分を中心に置きたがる心理は、とても男性っぽいなと思った。結局は陳腐な自己愛なんだろうけれど、なぜか妥協点を許さない。それが痛々しいほど伝わってきて辛かった。
この作品はミステリとしては、とても地味だ。事件は一つ。それも最初に誰が死ぬのか書いてある。が、主人公の書き込み過ぎなぐらいの心理描写と登場人物の人物造形の巧さが物語を引っ張る。引っ張られてたどり着いた所の景色に不満もなくはないが、今までの経緯から考えれば、この結末も当然だと思える。解説の小野不由美さんも書いていたが、ある人物特有の心理をロジックの中に組み込むのが西澤さんの特徴である。今回は、その心理形成の描写が特に長い作品。事件が地味なので「驚き」としては効果はいまいちだけれど、「理解」には繋がってると私は思った。さて、この作品はどこまで西澤さんの実人生なのだろうか?場合によっては、嫌いになりそうです(嘘です)

黄金色の祈りきんいろのいのり   読了日:2005年11月07日