《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

流行のファッションに身を包む女清掃人探偵・キリコが日常の謎を捜査し、全ての事件ををクリーンにする! 深夜のスポーツクラブでひとり残ったスタッフの行動が呼び起こした波紋。女子大生がバイトをかけもちし、やっと入手した希少種の猫が交換された不可解。小児病棟の入院患者である少年少女が噂した魔女騒動。新人看護師が遭遇した魔女の正体とは。はずみから妹を殺害してしまったアクセサリー通販会社の女社長。死体を隠そうとする最中に予期せぬ出来事が…。事件解決のみならず、当事者の心の荷物も軽くする本格ミステリー。


シリーズ3作目。本書には3つの短編と1つの中編が収録されている。これまでのシリーズでは、最終話に「あの夫婦」が登場していたので今回もと期待してたけど、残念ながら今回は無し。キリコの会話の中には「あの人」の存在が仄めかされてるんだけど…。「あの人」が好きな私としてはちょっと残念でした。
今回も前作と同じように相談者とキリコの出逢いは深夜である。深夜に一対一で対話することで相談者は安心してキリコに悩みを吐露できるのだろう。そして本書の特徴としてはスポーツクラブや病院など特定の職業ゆえの問題が出てくる。なぜ犯人はそんな行動をとるのか? その動機が見えた時に人のエゴ・怖さが垣間見られる。近藤さんはそういう人の心を描くのが非常に上手い。
探偵のキリコは決して「完璧すぎる人(「あとがき」より)」ではない。自分を責めてしまうような辛い体験もしている。しかし、そういう生きた人間だからこそ、被害者の痛みを理解し、犯人の思考や行動を見抜くのだと思う。人間味溢れるキリコがとても良い。次回作も是非読みたいシリーズ。そして次回作には「あの人」を…。

  • 「水の中の悪意」…深夜のスポーツクラブでひとり残ったスタッフの行動が呼び起こした波紋。水ばかりのプールで起こった火傷の原因とは…? 水の中の火傷という謎が面白い。犯人の動機を知ってあれも伏線だったのかと納得。そして何よりキリコの年齢が明記されていて驚いた。初登場時は本当に若かったのね。
  • 「愛しの王女様」…女子大生がバイトをかけもちし、やっと入手した希少種の猫が交換された。なぜ同種の猫が交換されたのか…? 寂しさからペットを欲した奈津には厳しい試練だなぁ。でも今後は一人前の飼い主になるだろう。優しいけれど残酷で、残酷だけど優しい物語。動物を飼うって「覚悟」がいると思う。
  • 「第二病棟の魔女」…小児病棟で噂される魔女騒動。新人看護師が遭遇した魔女の正体とは。そして少女の入退院の理由とは…? 4編の中では一番のお薦め。ミスリーディングからの逆転の真相が見事(少し情報不足ではあるが)。キリコが深夜に病院にいた理由は辛いなぁ。シリーズ読者なら尚更だ。キリコが歳を取るんだから、そういう事もあるよね…。キリコは頑張ったよ、と言いたくなる。
  • 「コーヒーを一杯」…はずみから妹を殺害してしまった女社長。死体を隠そうとする最中に予期せぬ出来事が…。倒叙モノ。といっても推理によって犯人を追い詰める、という展開ではなく、どうやって犯人を落ち着かせるかが書かれている。

モップの魔女は呪文を知ってるモップのまじょはじゅもんをしってる   読了日:2007年09月28日