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λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)

λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)

密室状態の研究所で発見された身元不明の4人の銃殺体。それぞれのポケットには「λに歯がない」と記されたカード。そして死体には…歯がなかった。4人の被害者の関係、「φ」からはじまる一連の事件との関連、犯人の脱出経路、…すべて不明。事件を推理する西之園萌絵は、自ら封印していた過去と対峙することになる。ますます快調Gシリーズ第5弾。


書名は「歯がない」なのに奥歯に物が挟まった感じの内容。読了しても残る異物感(食べた物はなかなか美味しいけど)。誰か爪楊枝持ってきて〜。気になってイライラしてしまう。泰然自若とシリーズを見守るという前巻の誓いは早くも破られてしまうかも。あぁ、εに誓ったのに…(笑) どうやら「一見さん」お断りらしい。全巻揃ってから「再読さん」になると本の真価が楽しめるみたい。「再読さん」にならない人には迷惑なシリーズである。まぁ、店の方針がそうなら従うしかないけど…。
Gシリーズは人名がどうでもいいシリーズだろうか。西之園(表記が「萌絵」ではないのは男女平等の精神からだろうか?)たち以外、もう名前なんてないも同然。被害者も加害者も暗躍する者たちの名前もあまり重要ではない。人が駒のように扱われている、という本格推理批判の常套句とはまたちょっと違う意味で人が駒のようだ。気になる泥棒さんたちは「あぁ、これがドラマだったら、前のシリーズで演じていた役者の顔で名前が分かるのに…」と思った。でも、あれか、彼らも歳をとったから違う役者さんが演じているのか…。あっ、これはネタバレか?
真相まで読んでしまうと森作品でこういうトリックは何度目だろう、という気もする。だからといってトリックが分かった訳ではないのだけれど…。犀川が真相に気づくのは早すぎる気もするが、海月が気づく時点では、ここで「読者への挑戦状」が叩きつけられても良いのではないか、というタイミング。ここまでで伏線も証拠もしっかりあるし。森作品はいつでも割と(案外?)フェアなんですよね。
でも、やっぱり消化不良かも。前半の問題編では犯人・犯行方法から犯行時刻などの細かい手順までも問題にしているのに、後半の回答編では犯人・犯行概要のみ。これでは証明不十分で部分点しかあげられない。まぁ歯切れの良いのがこのシリーズの特徴のなのかもしれないが。でも大雑把に歯で噛み切るからやっぱり消化不良。あれっ、なんか議論が堂々巡りしてませんか(加部谷風)?
自殺の問題は時事的な点から、また私も「まだ生きている状態」の身として、ふむふむ、こういう考え方もあるのかと読む。森作品の死生観は興味深い。

λに歯がないラムダにはがない   読了日:2006年12月17日