《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

打ち上げロケット、上に飛ばすか横に飛ばすか(元ネタ:岩井俊二映画の題名)。

夏のロケット (文春文庫)

夏のロケット (文春文庫)

火星に憧れる高校生だったぼくは、現在は新聞社の科学部担当記者。過激派のミサイル爆発事件の取材で同期の女性記者を手伝ううち、高校時代の天文部ロケット班の仲間の影に気づく。非合法ロケットの打ち上げと事件は関係があるのか。ライトミステリーの筋立てで宇宙に憑かれた大人の夢と冒険を描いた青春小説。第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞のデビュー作。

宇宙は広いな、大きいな。本書の題材は「火星ロケット」。宇宙好きな私はそれだけでワクワク(ブログ名の由来はまた別のお話ですが)。物語のおおすじは、かつて火星を夢見た高校生たちが、30代になりひとつのきっかけから再結集し、あの頃の夢を再び追う、というもの。かつての時間はある事件に使用されたミサイルが、高校時代に作成した自作ロケットに似ていると主人公が気づいた事から再び動き出した。その背景を調査する過程で、1人また1人旧交を温めることになった昔の同志たち。この展開は『風に桜の舞う道で』と少し似ている。そして集まった彼らはまた、高校卒業から止まっていた時間が動き出し、もう一度青春を、ロケット制作を再開する。
ミステリ関連の作品賞受賞作でありながら、ミステリ要素は本当に軽微である。著者のデビュー作でありながら本書は瑕疵がほとんどない。清々しい物語に欠点を挙げるとすれば、少し作為的なにおいが強い点でしょうか。天才集団だった彼らは何処へいったのか、キャラ付けをするために、そして物語を進めるために出来すぎなまでの友人たちの配置・職業はその最たる例だろう。 なぜかミュージシャンまでいるし。あとは先行して福井晴敏さんの『亡国のイージス』を読んでいた私は、現在のレーダー技術では素人のロケット打ち上げなんて即、露見するのではと思ったんだけどどうでしょう。
終盤は手に汗を握り、胸の鼓動が早くなる一方であった。最後には主人公たちと同じ時間・気持ちを共有できたような、私自身も仲間の一人のような錯覚があった。唯一読みを間違ったのは恋の行方ですね。多くの伏線はあったけど、こうなるとは思いもしてませんでした。高校時代と現在の、立場や目的の違いも上手に織り込んでいる。けれど変わらない情熱がその胸にあり、それが人の原動力であった。
物語もとても面白かったが、作品の性質上必要になるロケットに関する知識をとても興味深く読んだ。ロケットとミサイルの違いは構造の違いではなく目的だけなんだと理解する事が出来た。打ち上げロケット、上に飛ばすか横に飛ばすか(元ネタ:岩井俊二映画の題名)。飛距離をより伸ばすのは同じだけど、目的は大きく違う。出来ればロケットだけを作る社会を…、と願い本を閉じた。

夏のロケットなつのろけっと   読了日:2004年08月21日