《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

GO (角川文庫)

GO (角川文庫)

広い世界を見るんだ―。僕は“在日朝鮮人”から“在日韓国人”に国籍を変え、民族学校ではなく都内の男子高に入学した。小さな円から脱け出て、『広い世界』へと飛び込む選択をしたのだ。でも、それはなかなか厳しい選択でもあったのだが。ある日、友人の誕生パーティーで一人の女の子と出会った。彼女はとても可愛かった―。感動の青春恋愛小説、待望の新装完全版登場!第123回直木賞受賞作。


面白い!テーマとして人種の問題が真ん中に据えられているけれども、青春・恋愛小説としても最高に面白い。特に両親がいい味を出している。元ボクサーで今はゴルフに夢中の父親・その父親と喧嘩と家出を何度も繰り広げる母親。この二人がいなかったらこの小説のコミカルさは出せないだろう。場面場面のエピソードの必ずと言っていいほどこの二人は出てくる。この二人のエピソードによって主人公・杉原の無骨、でもまっすぐ育っていく過程がよく判っていくと思う。
人種であれなんであれ差別というのはとても容易に出来ることだと思う。何の根拠もなく自分が優れていると思い、それ以外のカテゴリを劣っていると嫌ってしまえばいいのだから。ただそんな事を軽々しくする人はこの本を読んでみればいい。この本は、ただ同じである、と言っている。差別には根拠のないものが多い、ただの偏見であるものが多い。だけど流布される偏見こそ長く根付いてしまうものである。差別をする人はこの本を読んで、きちんと考えを相対化した上でも、まだ言えるだろうか?どうして自分たちは優れてるなんていえるだろうか、どうして一方を劣っているといえるだろうか。なんて少々熱くなるぐらい、熱く読めました。面白かった。

GO   読了日:2001年05月21日