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動機 (文春文庫)

動機 (文春文庫)

署内で一括保管される三十冊の警察手帳が紛失した。犯人は内部か、外部か。男たちの矜持がぶつかりあう表題作(第53回日本推理作家協会賞受賞作)ほか、女子高生殺しの前科を持つ男が、匿名の殺人依頼電話に苦悩する「逆転の夏」。公判中の居眠りで失脚する裁判官を描いた「密室の人」など珠玉の四篇を収録。


横山さんの作品だから全作品、警察が舞台かと思ったら「あらすじ」の通り舞台は警察内だけではなかった。他の作品は過去に殺人を犯した男・新聞記者・裁判官と職業も立場もバラバラ。バラエティに富んでいる作品集ともいえるが、個人的には警察特有の慣習・倫理的制限により、よりミステリらしいバリバリの警察小説の方が好きだった。今回は、どちらかといえば痴情のもつれや個人的な感情の交錯を描いた作品が多く、ぎちぎちの組織内での独自な空気というのは薄い。しかも夫婦にしても恋人にしても上手くいかない人たちばかりで、読み終えると暗い気持ちになった…。最後の「密室の人」が特にそう思わさせる。
もちろん警察以外でも「組織が故に…」という縛りはあるのだが、やはり全てが管理・監視されているような緊張感や息苦しさは少ない。『陰の季節』ではその息苦しさを嫌悪したのだが、本書と比べてみると息苦しいからこそ切なさが心に響く感じがした。1編目がとても面白かったので、そう感じるのかもしれない。

  • 「動機」…表題作。あらすじ参照。横山さんらしい作品。最初から最後まで色々な要素がギュッと凝縮された短編。それでいて圧縮具合に無理がない。短編はどうしても伏線がバレバレに浮き出てしまう事が多いのに綺麗な構成だった。
  • 「逆転の夏」…あらすじ参照。話のディテールは社会派っぽいが、普通の推理小説としてみると計画の大枠がとても大雑把。通帳破って証拠隠滅完了と思う浅はかさはどうか…。最初から最後まで怪しすぎるのに。横山さんには個人の懊悩よりも組織としての縛りが故の苦悩や盲点を書いて欲しかったので私は低評価です。
  • 「ネタ元」…ライバル紙に次々購読者を奪われてしまった県民新聞。記者・真知子は自分の未来のためにネタ元に情報を流して欲しいのだが…。組織のしがらみに加え、男社会の中の女性であるという差別意識を取り込んだ作品。しかし全体的に思い込みの強い人ばかり出てくる小説だ。みんな神経を磨耗してるのね。
  • 「密室の人」…あらすじ参照。結局「彼」がどうしてモテるのかが分からなかったなぁ。話も一つ前と内容が被っているような気もしたし…。数日前に「茶人たちの小説」を読んだばかりで茶杓という言葉に過敏に反応してしまった。しかし、こっちの茶人には雅な感じはしない。お茶も美味しくなさそうに思える。

動機どうき   読了日:2006年05月04日