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偶然の祝福 (角川文庫)

偶然の祝福 (角川文庫)

お手伝いのキリコさんは私のなくしものを取り戻す名人だった。それも息を荒らげず、恩着せがましくもなくすっと―。伯母は、実に従順で正統的な失踪者になった。前ぶれもなく理由もなくきっぱりと―。リコーダー、万年筆、弟、伯母、そして恋人―失ったものへの愛と祈りが、哀しみを貫き、偶然の幸せを連れてきた。息子と犬のアポロと暮らす私の孤独な日々に。美しく、切なく運命のからくりが響き合う傑作連作小説。


あらすじからすると、お手伝いのキリコさんが伯母さんやリコーダー、万年筆などを捜してくれる心温まる話と思ったのですが、違いました。キリコさんは一話しか出ないし、伯母さんは失踪したまま、心も温まるどころか薄ら寒さを感じる始末。期待外れちゃいました、ものすごく。悪いほうに…。
いい意味でも悪い意味でも、女性の書く小説。侮蔑の意味なんか全然なくて、女性にしか書けない小説。解説の川上弘美さんも書けると思います。 言葉の選び方や世界の書き方はキレイだと思います。主人公の立場など直接は語られない物語で、柔らかくその輪郭だけを縁取っている。その輪郭から見えてくる・構成されていく世界。しかし私にはこういった、感覚で生きている女性のことは分からなかった。こんなに不安定に生きている女性が息子や犬を育てていることのほうが怖い。いくら最後に蘇生したとしても、私にはこの女性がいつか世界の淵から落ちることが再びあるのではないかという危惧だけが残りました。

偶然の祝福ぐうぜんのしゅくふく   読了日:2004年07月28日