- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/06/29
- メディア: 文庫
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入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決…。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれ成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。
伊坂さんは律儀で潔癖すぎる。自分が散らかした伏線をキレイに塵一つ残さず片付けてしまう。普段はその高性能掃除機っぷりが快感なのですが、今回はその隙のなさに作為を感じるのだ。確かに考えつくされた構成や選ばれた言葉たちに痺れた箇所はいくつもあった。けれど春夏秋冬4つの編に分かれた、それぞれのラスト、一番盛り上がる場面で展開に察しが付いてしまう事が多かった。欲を言えば、もっと意外な繋がりや展開が読みたかった(この本は「青春小説」らしいので高望みではあるが)。一方で鳥井の部屋の隣人なんかは伏線かな?と構えてたら違った。プレジデントマンもいまいち効果的とはいえない登場と退場だったなぁ。伊坂さんならもっと上手く扱えるような気がした。
いや、この本を私が苦手とする一番の原因は、やっぱり鳥井の事故だ。確かに前進し続けるエピソードとしては効果的だけれども、私には物語全体に暗い影を落とした(全てが陽気なだけの話を望むわけではないが)。知恵とユーモアで乗り切る話にしてほしかったな…。そして気づいたのは、お洒落も駄洒落も「洒落」はスベる可能性があるってこと。今回はお洒落な言葉が上滑りしていたかな。そして展開も、ややスローペースだった気がする。要は長いってことかも。
しかし一癖ある魅力的な登場人物がいっぱいいて、彼らの喋り方・口癖・行動論理などは読み終える時にはすっかり身に馴染んで、お別れではしんみりしてしまった。気づいてみれば西嶋の性格も喋り方も結構良いじゃないですか!側にいるとやっぱり暑苦しいかもしれないけれど…。麻雀知ってたらもっと楽しかったのかな。覚えてみたくなった。ボーリングも良い。