
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 文庫
- 購入: 22人 クリック: 348回
- この商品を含むブログ (613件) を見る
市役所で働く成瀬、喫茶店主の響野、20歳の青年久遠、シングルマザーの雪子たちの正体は銀行強盗。現金輸送車などの襲撃には「ロマンがない」とうそぶく彼らの手口は、窓口カウンターまで最小限の変装で近づき「警報装置を使わせず、金を出させて、逃げる」というシンプルなものだ。しかしある時、横浜の銀行を襲撃した彼らは、まんまと4千万円をせしめたものの、逃走中に他の車と接触事故を起こしてしまう。しかも、その車には、同じ日に現金輸送車を襲撃した別の強盗団が乗っていた。
一行目から最後の一行まで無駄がないミステリの面白さを堪能した一冊。伊坂さんだからこそ何かあるぞ、って思ってしまってオチが読めてしまった。しかし、登場人物たちの個性がよく発揮できていて非常に出来の良い小説であることは間違いがありません。一癖二癖ある登場人物は面白さを引き立てています。自分は魅力的なのにそれを気付かぬふりして、魅力を内に秘める人たち。私は雪子の息子の「ヒューマニズムって何なの?」がお気に入りのセリフです。伊坂さんの小説はそれぞれの登場人物がちょっとずつ登場してるんですね。
伊坂さんの手にかかると強盗も殺し屋稼業も全てサラリと出来うるというのが面白いですね。銀行強盗はその題材一本で本を一冊書けるのに、今回はサラリと何件もこなしてしまう。まるで気負わない人たち。重犯罪を犯罪とも思っていない。伊坂さんの小説には「反省しない若者」が毎回出てきますが、一番世を斜に見ているのは主役たち。見つかったら反省するけど、露見するまで反省を忘れる彼らがカッコよく見えるんです。